1月某日 新しい年に、最初に読む一冊をどれにしよう。吉増剛造さん『火の刺繍』(響文社)を机の上にどしんと置いた。1200ページを超える辞典のような本。今年は吉増さんの詩のことばとじっくり向き合う一年にしたい、ふとそう思ったのだ。
1月某日 『月刊ホン・サンス』Vol.3が届いた。月永理絵さんが編集長を務める、韓国の映画監督ホン・サンスをテーマにした冊子。「全編ピンボケ映画」と言われるホン・サンスの『水の中で』をイメージしながら、青春をテーマに4冊の本を紹介するコラムを寄稿した。
1月某日 年に一回、M大学の「マイノリティ文化論」という授業でゲストスピーカーを務めている。例年、在日コリアンの作家・李良枝の文学を取り上げてきたのだが、今年は深沢潮さんの『緑と赤』(小学館文庫)を紹介することにした。在日コリアンの大学生・知英、K-POPファンのその友人・梓、韓国人留学生・ジェンミンらが、日本と韓国のあいだで揺れ動きながら懸命に生きる姿を描いた青春小説だ。
昨年は『週刊新潮』のコラムが韓国にルーツを持つ深沢さんを名指しで差別する事件が起こり、授業ではこの問題についても解説した。しかしそれ以上に、深沢さんの文学の魅力をしっかり伝えることを心がけた。若い学生にとって、『緑と赤』の登場人物の多くが同世代であるという点が共感を誘うのだろうか。熱心なまなざしが、一斉に教壇の自分の方に向けられる。かれらの心に、深沢さんの文学は届くはずだ。
1月某日 深沢潮さん『わたしのアグアをさがして』(角川書店)を読む。スペインへの旅を通じてフラメンコの魂に出会い、生きることを取り戻す女性の物語。これもよい小説。
1月某日 東京の神保町EXPRESSIONで詩人の林浩平さんのレクチャー〈吉増剛造ルネサンス―未来の詩として吉増剛造を読む―〉に参加した。林さんの解説とともに、吉増剛造さんの詩を第一詩集から精読していく試み。吉増さんの父方のルーツ、和歌山の永穂村をめぐる興味深い話を聞いた。永穂は「なんご」と読むそうだ。会場で、林さんの評論『裸形の言ノ葉 吉増剛造を読む』(書肆山田)を入手。
1月某日 出版の仕事で大阪へ出張した折、本町から駒川へ移転したtoi booksを訪問。益田ミリさん『中年に飽きた夜は』刊行記念原画展を開催中で、夕方の本屋さんはたくさんのお客さんでにぎわっている。その様子をみて、うれしくなった。店主の磯上竜也さんに挨拶し、山元伸子さん『ある日 読書と断片』(ヒロイヨミ社)を購入した。
1月某日 三重・津のコミュニティハウスひびうたで、「ともにいるための作文講座」の最終回を開催。チン・ウニョン&キム・ギョンヒ『文学カウンセリング入門』(吉川凪訳、黒鳥社)の内容を少しアレンジしたライティング・ワークショップを行った。講座の後は、ひびうたでここ数年続けている読書会を振り返る集いを。この読書会では、山尾三省、真木悠介、宮内勝典、石牟礼道子、竹内敏晴の著作を読み継いできた。今春からは心機一転、世界のトラベルライティングをテーマに本を読んでいくつもりだ。メンバーの反応もなかなかよい。さて、まず何から読もうか。
1月某日 昨年ひびうたで行われた文章講座の『受講生作品集』を読む。エッセイ、ショートストーリー、詩、朗読劇。自分はショートストーリーの講座を担当したのだった。受講生の作品がこうしてかたちになってうれしい。
1月某日 西への旅から戻ると、吉田亮人さんと矢萩多聞さんによるすばらしい写真絵本シリーズ、『はたらく農家』『はたらく洋菓子店』(創元社)が届いていた。金珍娥さんと野間秀樹さんの『ユアと韓国語 入門』(くろしお出版)も。今年は韓国に行く予定があるから「勉強しなさい」ということだな、きっと。