フェスの雑踏のなかで

若松恵子

年の瀬、12月30日に音楽フェスにでかけた。
COUNTDOUN JAPAN 14/15。12月28日から31日までの4日間、幕張メッセを会場に、5つのステージに185組のアーティストが出演する年越しのお祭りだ。

雑誌『ロッキング・オン・ジャパン』に登場する若手のロックバンドが多く出演するフェスだから、観客の大半は自分の子どもたちの世代で、仲間に混ざるのは少し気恥ずかしけれど、仲井戸麗市と佐野元春の音楽を聴きに出かけたのだった。若い頃に、心躍らせて聴いた2人のロッカーは、2014年の今もとびきりのロックスピリット溢れる演奏を聴かせてくれて、うれしかった。

エレキギター1本で登場した仲井戸麗市は、出演者の中で最年長だとステージで苦笑していたけれど、歪ませたぶっとい音でエレキを聴きまくって、ギター1本あれば充分ロックできることをやってみせてくれた。佐野元春が若いメンバーのCOYOTE BANDと演奏したデビュー曲「アンジェリーナ」は瑞々しかった。踊り出さずにはいられない、弾ける演奏だった。

フェスは居心地良くしつらえてあった。屋台のご飯はメニューも豊富で、クロークや仮眠を取ることのできるリクライニングチェアーまで用意してあった。若者たちのニーズに合わせて、どんどん改良され、客も増えているのだろう。一方社会は、ますますおかしく、若者に厳しいものになってきてはいないか。仲井戸麗市や佐野元春の演奏がより尖がって、シンプルに強いものになっているのは、このことと無関係ではないはずだ。

フェスの雑踏のなかで思う。
満たされない、寂しい気持ちを抱えてフェスにやってきている”ひとりぼっちのあいつ”はいないだろうかと。
仲井戸麗市は、爆音でニールヤングの”Hey Hey, My My (Into the Black)”をカバーしていた。
「Rock and Roll Can Never die」を「ロックンロールはここにある」と唄っていた。
大丈夫、ロックがある。
自分をへこまそうと侵食してくるものに、負けないというスピリット。
“ひとりぼっちのあいつ”にも届いただろうか。