122アカバナー(7)きょうりゅうは、びねつ

藤井貞和

ははは、昔話紀になると、
さんようちゅうがひろえる。
物語紀には、
きょうりゅうがおおあばれ。
びねつでねている、
ぼくのきょうのいちにち。
あしたはない、
じーじは言う。 「おれらは、
ぼうそうろうじん。」
たいようは赤い花、
まわりをつめたいみずが囲む。
あって、なくて、
またあって、しずむ、
おもたい動作環境。
わらっちゃうね、
おれら、なんて、神さまの言う、
せりふではない。
ゆうがたになって、
びねつはぼくを、
デストピアにみちびく。
デストピアですよ、
「つゆ」と言ってみた。
出なくなったこえで、
つゆを呼ぶ。 生まれる日の、
きょうりゅうは卵を割る。
生まれる物語が、
まっ赤なゆうひに溶けて、
まだ赤い。 火口みたいだ。
ぼうそうする?
ぼうそうするあした?
それでも、草葉は、
ぼくをつつむ。 棄てられる、
と思う。 吹く風速で、
打つちからのてつがくが、
ぼくにさだまる(定量化する)。
ぼくはすうがくを、
からだにしみわたらせる。
あしたの自爆を、
やめさせたい、それだけ。
赤花、見ているぼくの、
ない言語が ないすきまで、
卵から出てくる時だから、
咲きなさい。 いつか、
どこかで、と言わず、
なにもせず、おおあばれもせぬ。……

(「新年を声おしまずに寿ぎぬ」貞。)