104 翠素ふたたび──土雲へ還る

藤井貞和

梅雨と、雷雨とが、
相談をする。
ぼくらはたまり水に、
船と、星かげと、
どちらを置いて逃げる。
いいえ、永遠の、
さよならを告げて逃げる。
蓮華をいちまい、
持って逃げる。
まだ寒いときがあるから、
布団にする。
水素くん、さよなら、
空中では、生きられないから、
土雲に還ります。

(MOX燃料が高浜原発に届いたそうです。九月下旬には一時、五〇基すべての原発が稼働を停止する可能性があり(二度めですね)、高い評価を惜しみません。しかし、メンツを通したい側としてはとんでもないことなんでしょう。注文しておいたMOX燃料が届いたら、火をつけたくなるでしょう。ヒヒヒ、『水素よ、――炉心露出の詩』を出します〈大月書店〉。本屋さんが困る、社会評論ではなし、詩論ではなし、哲学・思想、ちょっとちがう。『現代詩手帖』の特集号では、悠治さんの記録をはじめとして、もの凄い論考がならび、「東歌篇――独吟千句」も掲載してあります。四月からは社会復帰しています。お天道さまには負けられないもんね。)