切れ目からこぼれ落ちる蜻蛉

笹久保伸

雲と雲とを結ぶ花に咲いた青い石の側面に隠れた三匹の蜻蛉は透明なジャケットに還れよと叫ぶ犬の背中のほうからしきりに噓をつき通そうとその言の葉の下で雨宿りして自分なりに噓と噓との切れ目を探しながらそこから差し込むと
予測された昨日の天候を明日になっても片隅に考えながら歩幅の数はさほど上がらず呼吸は次第に荒くなって行った
その晩のしつこい夢の記憶だけをたよりに行けるところまで歩こうと歩幅を広げたその瞬間に記憶の夢は枯れた花が枝から落ちるまたそのそしてそのまたの瞬間の呼吸によって見える態度にも限度がありそう長くパロディは続かないと言う緊迫感に襲われてゆくが長い長い鳥の尻尾にしっかり捕まっていてもどこで振り落とされるかはわからずその夢の続きの方向性や変化を暗示しているとは言い切れていない雲と雲とを結ぶ蜘蛛の糸にしっかり捕まり犍陀多のための小さなカンタータを歌う地獄の聖歌隊のお経を主題にした変奏曲の中に一輪の蓮の花を思わせる旋律だった人間の泥沼の争いはその言の葉の重なりずれる数だけ変奏してゆく結論を求める三匹の蜻蛉は噓と噓との切れ目から落ちる呼吸や記憶によって雨宿りを続けていた