梅雨だけど雨が降りません

仲宗根浩

先月、ノート型のパソコンのハードディスクを貧相な40GBから120GBに交換。もう一台のパソコンもOSの入れ換えなどしていたらバックアップの住所録のデータが飛ぶ。まあ、今年来た年賀状と今までのメール見てまた入力すればいい。たいした数でもないし。いま、テラバイトのハードディスクが一万円を切る価格になっている。でもそんなにあっても使いやしない。

五月は七年ぶりにチケットを買い、二日間、山下達郎のコンサートに行く。七年前、小学校一年生で連れていったガキはもう中学二年生になった。どうしても行きたい、という。ついに部活を早退しやがった。いい根性してる。今回は見事なロックンロール・ショーだった。二日目、一曲おまけで演奏曲が増えたことをあとで知ると悔しがっていた。二日目は離れ小島に合宿に行っていたから当然行けない。「ロックンロールはパッションさえ失なわければ懐メロになりません。」こんな言葉を聴いたコンサートから家に戻ると四十年前に作った曲を懐メロにしなかった稀代のロックンローラーが死んだニュースがテレビで流れた。最初に聴いたのは「僕の好きな先生」。小学生の頃、兄のパシリで「新譜ジャーナル」「ヤング・ギター」をよく買いに行かされた。三人組はその編成からフォーク
にカテゴライズされていた。だから「ステップ」を歌う姿がテレビに出たときはびっくりした。こんなになっちゃったんだ。しばらくするとどこの学校の文化祭でも「雨上がりの夜空に」をコピーするバンドが異様に増えた。数日間はテレビの決まりきった映像、コメントに辟易する。

「愛し合っているかい」
オーティス・レディングが映画「モンタレー・ポップ・フェスティバル」で”I’ve Been Loving You Too Long”を歌う前に観客に語りかける。DVDの字幕では「みんな、愛し合っているよね。」と訳されていた。

ラフィー・タフィーの映像を見たミーハーはギターとベースのアンプ、真空管は手が出せないので同じ”ORANGE”の小さな練習用のものにした。

梅雨に入ったが雨は二日くらい降っただろうか。涼しく、すごしやすい天気が続いている。クーラーはいまだ稼働せず。めずらしく奥さんがカーペンターズのCDが欲しい、という。最近出たベスト盤だった。新しくリマスタリングされ初めて高音質と言われているSHMーCDというのを買った。十数年前、四、五枚購入したものと全然違う。デジタルの世界はおそろしい。格段によくなったのはドラムの音、逆に多重コーラスは分離が良すぎて厚みが無くなっている。”Close To You”のコーラスがわたしはとても好きで10CCのあの変態ループコーラス大活躍の”I’m Not In Love”と同じくらい好きなんだけど、う〜ん。でもなんで日本盤はミュージシャン、エンジニアのクレジットはちゃんと掲載しないんだろ。

ひとりの午後、やっと落ち着いてチャック・ベリーのCDを大音響で聴く、といっても自分にとっては大音響ではないが、他家族三名にとってはうるさいらしいから、ひとりのときにしかある程度の音は出せない。真っ昼間、聴いていると、どうせ今日は車に乗る用事もない。呑みはじめる。しばらくするとつまみが欲しくなる。実家からもらった島らっきょをいくつか取り出し、土をはらい、水洗いし、根を手でちぎり薄皮をむき、塩で軽く揉む。削り節を加える。他に何かないか冷蔵庫をのぞくと容器に入った豆腐四分の一丁。容器にたまった水分を全部捨て、塩で揉んだらっきょを豆腐が入った容器に入れ、スプーンで豆腐をつぶしながららっきょと混ぜる。少しのごま油と醤油を加える。わりとうまい。すこし幸せな気分になる。ごま油はえらい。

新しい眼鏡ができた。遠近両用。文庫本の活字が見える。CDジャケットのクレジットも見える。でも、目を動かすとぼやける。ちゃんと遠くを見るようにするためにはしっかり正面を向いて見ないといけない。活字を読むときは少し顎をあげてと。乱視も強くなっているみたいなのでそれも矯正してもらった。慣れるまで時間がかかりそう。