冬の旅★36

北村周一

いずこにも目のあるふうけい彼岸かな
 まぶたとじれば菜ノ花畑
春の日の余白のごとく砂場ありて
 すなよりしろきてのひらとあそぶ
<冬の旅>へいざなうばかり月の下 
 くれゆく秋の谷深きまで
時宜を得てホウシツクツク鳴きはじむ 
 残暑見舞いに打ち直さなとも
端末手によむ・きく・さらう喜びよ
 ebookなかなかやるじゃねえか
果物屋のせがれ手ぶらで来ることなし
 あるくと遠い新婚の家
野薔薇摘み絵を画く室に活けたりき
 みんなみに伊豆の海はもえいて
いくらかの効はあるらしうなぎパイ
 あさの食事の後の話題に
思慮深いおとなはいずこ「サクラチル」 
 未来がぐにゃりとぬかるみを来ぬ
日がのびて酒を飲むにはまだ早い
 棒のメンソレ口許に塗る
窓に向かいオネェことばを真似てみる 
 すこし気分がラクになるわよ
てぶくろや片方ずつをふたり連れ 
 ひとつの傘に雪降るみちを
絵巻物のさいしょの頁は白紙です
 プロトコロンという遊び紙
吹くかぜに旗ははためく夜もすがら 
 つつみかくさず明かしたきこころ
月よりの使者を真中におどりの輪
 盆の支度に戸惑う従妹
襲われてウズラとび立つ塀の内
 のこるひとつはすでに首なし
みずからのちからでひとはねむりたい 
 くだとくだとがさやぐあけぼの
雨晴れていきおう枝の桜花
 老木一樹身震いをせり

 
*連句に挑戦してみました。といっても連句擬き。ルールが難しくて、手に負えません。
ブログに発表していた、4月9日(月)~5月14日(月)までの三十六首からの選抜で構成しました。大幅な修正加筆かつ移動がありますが。一応三十六歌仙のつもり。😅 
タイトルは、ふゆのたびキララ36と読みます。