いつからか、冬の曇り空が好きになった。
晴れの日よりも冬ならではの尖った空気をはっきり感じ取れる。
この寒空の下でウイスキーを飲むのもいい。土や草のような香りを一層強く味わえるから。
その日は特別に寒かった。陽の暖かさが届かないほど、空は分厚い雲に覆われていた。
夕方が近づくにつれて、さらに容赦なく冷たくなっていく。
そんな日に屋外で、グラスに注いだモルトウイスキーをゆっくり体に循環させる。
自分のペースで、香りや味をしっかり確かめながら。
ウイスキー狂いの友人たちがやってきて、とっておきのボトルを持ってきてくれる。
数人でシェアをして、その恐ろしい美味さに驚く。日はとっくに暮れてさらに冷たい風が吹き荒んでいるにも関わらず、
深みのあるモルトの味にみんな夢中である。土や草花、スパイスやフルーツの甘み。まろやかで、水のように飲めてしまう。
一人が突然、「地球を飲んでいるようだ」と呟いた。こんな天気の日に外で飲んでいるからかもしれない。
ふだん浮かばないことばがぽつぽつと出てくるようだった。
ああ、そうだね、その通りだ、とみんな深く頷き、引き続きグラスを傾けた。