夢を見るくだものまたは不眠その豊かさについて

北村周一

遠い遠いある国からたくさんの雌牛を連れてきて
自分の牧場に放したところ
それに対してとやかくいう人々があらわれたのです
どうしたものかと考えていたら 
まことに小さなヒョウタンみたいな形をしたくだものが
牧場のそこいらじゅうに生えてきたのでありました
ある女性アナウンサーはひどい不眠症にかかっていて
この眠り薬のようなくだものの評判を知ることとなり
毎夜毎夜寝る前に食べていたのでありました
しかし食べていいのは月に四つか五つぐらいまでで
ぐっすりと眠ることができるかわりに
食べ過ぎると低血圧気味になりやすく 
人に会うたび青ざめていたので
医師や年長者たちは心配そうに彼女を諭したのでした
やまいに苦しむようならと
彼女の未来の写真を見せながら
まるで晩年を振り返りみるように
眠れないことを悩むなと説いたのでありました
そしてこうもいったのです
よき眠りは豊かな老後を保証するとも
けれどもそのようなアンバランスで紋切り型の教訓は
役に立たないばかりか人によっては
余計なお荷物になりかねません
思うに他人の判断は往々にして結果論であり
当人の願望とはギャップが見られることもあるでしょう
一瞬にして忘れてしまうあけがたの夢の数々
よき眠りと不眠との境目いわゆる閾値は
どこにあるのかと疑わざるを得ません
むしろ目を凝らせばここにもあそこにも
雑草のように顔を出しているのかもしれません
ところで例のヒョウタン型のくだものの味なのですが
乳酸飲料とりわけヤクルトの味に似ていたのだそうです

 夜の空に星を見ているそれだけで輝きもするひとのいのちは