嫡男としてのつとめは果たすべく離縁覚悟に迫る一月
頂上は空洞にしてみはるかすお堀のみずも華やぐ二月
さらばとて花にあらしのお別れも傘も差さずに走る三月
不敬罪は死語と雖も仄暗くかくれみえする暦(れき)あり四月
天窓に青葉若葉の光(かげ)みだれピアノ弾く手を休める五月
死に至るまでの時間の短さを問いつつきみに触れる六月
火星今大接近の声のありてみるものなべて紅き七月
肉眼でたしかめたきに土星の輪 追えば追うほど曇る八月
秋かぜやR付く月牡蠣を手にこころゆくまで味わう九月
むらさきの忌日を前にひとり寝の 重い毛布を嘆く十月
画家が来て湖面にうかぶ月影をやさしく掬い取る十一月
誕生日いつしか旗日となりしことも恩寵にして聖十二月