11/1 土
劇場の初日。帰ってきて晩飯を食べてると号泣のおかぁはんから電話が。実家の愛猫、ロロが死んでしまった。ちょっと前からしんどそうやと相談を受けてたんやけど、こんなにもあっさり逝ってしまうとは…。私がドイツに行く前にうちにきた真っ黒な子猫。むちゃくちゃ大きく育って7キロくらい、たぬきみたいなフォルムしてるのに俊敏で、ネズミも野ウサギも狩ってきたりしておった。今年で14歳、調べると人間の72歳くらいに相当するらしい。うちのじぃちゃんが亡くなったんとおんなじ歳や。いつの間にかそんなおじぃになってたんやね。まんまるな顔やけど鼻筋が通っておっとこ前で、大好きやった。淋しくなるけど、おつかれさま、ロロ。
11/2 日
昨日の今日でやっぱり悲しい。私は今日も悲しくて元気がなく…と思いきや、同僚も数人体調を崩して劇場はスタッフぎりぎり、体が元気な私ががんばらねばと走り回る。猛暑やと思ったら急に寒くなったり、人間ですら体調おかしくなる天候やもの、動物はもっとこたえるよなぁ。若女将が猫大好きやから、休憩時間にロロのこと話してみた。ほだらほんまに親身になってくれはって、昔飼ってた猫の話してくれたりして、みんなこうやって別れを惜しんでいってんねやなぁとつくづく感じた。
夜、おかぁはんと色々と連絡取ってたら、ふと上方落語の大ネタ「地獄八景亡者戯」を思い出した。鯖にあたって死んだ喜ぃさんが、閻魔さんのとこへ向かう、あの世の旅噺。ああ、うちらはしんみりした慰め話でロロとお別れせんと、明るく笑って送り出したらええんやなぁと思った。
11/3 月・祝
今朝には太呂さんとこのおばあさん猫、サヴィちゃんが亡くなった。こちらは18歳、私が知っている限りでもちいさくちいさくなってきておった。家族のことが大好きな彼女はみんながいる日に、みんなが通る部屋の真ん中に寝てたらしい。サヴィちゃんらしいなぁ。ロロと同じ舟で三途の河渡りしてるかもしらん。ずうたいはでかいけどびびりの優しい子がおったらロロやし、よろしくねサヴィちゃん。
11/4 火
朝っぱらからギャー!フギャー!!という猫のケンカの声が近所に響きわたった。布団から飛び起きて見に行ってみたけども、人んちのガレージでやっとるみたいで姿は見えん。声的に珍しくソラちゃんが押されてるらしい。間もなく声も止んで家へ帰ってみると、しゅんとした負けっつらのソラちゃんがちょこんと公子さんとこの机の隅に座っておった。もうおっさんになってきてるんやもの、若いのに世代交代してもしゃぁないがな。目立った怪我はないものの気落ちしてるらしく元気がない。どちらかと言うとやさぐれてる感じで、ちょっとほっといてくれんか…という具合に、台所でひとり寝たりしていかにも孤独な猫みたい。ちょっと芝居がかっている気もするけども、とりあえず放っておこか。
11/6 木
米朝さん100回目のお誕生日。めでたい!最近のマイブームは風呂に浸かって落語をかけること。家の風呂は銭湯のようにあつうはならんし、とにかく長く浸かって芯からあったまる。ぼんやり長風呂するには落語聞くのが一番。今日も米朝さんの一席聞こうっと。
11/8 土
吉朝さんが亡くなって今日で20年。ほんまに?20年て、ほんまのほんまにはやすぎやで吉朝さん。もうちょっとおじぃになって落語してる吉朝さん、見てみたかったなぁ。
さて、数日前から寡黙な猫になっているソラおじさん。食欲旺盛、いつも通り食べて飲んで、痩せたり痛がったり寝られんてなこともなく、至極健康な生活をしてて、たまに甘えに布団に入りに来るんやけど、未だに台所のふわふわの敷物の上でひとりじっと寝てる時間が長い。外にも全然行きたがらんし、いよいよ家猫になったんか!?と公子さんと話しておる。
11/10 月
公子さんのみた夢シリーズ。まず、うちに日本酒いっぱいある?と唐突に聞かれる。まァ…二階に剣菱の一升瓶と、その他小さき酒たちを少々…と答えると、今日の夢はこんなんやったという。急に窓から知らん人が入ってきたから公子さんはびっくりして、何か用ですか?と聞いてみる。すると、ここにお酒がたくさんあると聞いて…と窓から来た人は答えたそう。泥棒かなんか知らんけど、家主がおっても慌てずに「酒を呑みに来た」と返すなんて、落語みたいな展開やないの!?
11/14 金
演芸場で一緒に働く同僚たちと女子4人でアジ釣りへ行った。集合は午前6時、久しぶりの早朝電車で葛西へ向かう。駅の近くに船着場までの送迎が来てくれる算段で、朝が早くてすでに疲れた4人と、装備バッチリの釣り人おっちゃん3人を乗せた車が海を目掛けて走る。手ぶらで行っても全部貸してくれるという名目のとこやけど、釣り人を見るとこんな素人でも大丈夫か…?とちょっとうろたえた。到着して車を降りると、おばあちゃんの「船が出るから早く!」と言う叫び声に急かされて、支払いとアレコレを借りて船に乗り込み、釣りのポイントまで船が出発した。海風が気持ち良く、何より空がむっちゃ綺麗!10分ちょいで着くやろうと思っていたら千葉の方へ出るべく30分くらい船は走り続け、途中でみんな座ったまま寝てしまった。途中で目が覚めたらとぉ~くに富士山が見えてちょっと感動したりして、そこからまだまだ走り続けてやっと船が止まった。船長と隣で釣ってたおっちゃんにコツを教えてもらいつつ釣ると、入れ食い状態で釣れる釣れる!釣りながら、これ持って帰るのどうしよ…と冷静になる程アジが釣れまくった。船のみんなが十分に釣ったと思われる数時間後、次のポイントへ行きますー!とまた船は走り出した。実は船に若干酔い気味やった私は風を受けながら遠山の金さんの歌を歌い、遠くを見渡しながら必死に酔いをごまかした。次のポイントへ着き、トイレへ行ったが最後、閉塞感の中船の揺れで視界がずれ、完全に船酔いしてしもた。船が止まっているのが辛い、早く船が走ってほしい…と思いながら、必死になんでもないつもりでぼんやり座っておったが、いよいよ撒き餌か…!?と思う程の船酔いの波がやってきて思わず手にビニール袋を握りしめる。隣でお嬢が大丈夫?と言っているがそれどころではない…が、なんとか峠は越したようで、やばかったわ…とようやくお嬢に返事をした。そうこうしてる内に念願の?帰りの時間になり、船はまたバタバタと風を受けて走り出した。お嬢と話しながらふと見ると、初めて夢の国ディズニーランドを目撃した。4人で100匹以上釣ってしまい、一旦演芸場へ持って帰ってるべく、魚くさい4人は電車で十条を目指す。お嬢は料理好きで、賄いに出してくれるらしく楽しみ。演芸場に着いたらちょうど若女将が出てきて、近くで飲みにいく軍資金までいただいた。ありがたすぎる。結局朝から何も食べずで夕方にようやくごはんにありつけたのやが、ひとり船酔いした私はまだ船の上にいる心持ちで地面がゆらゆらしておる。他のみんなは平気やったらしく、三半規管強いのってええなぁ~とつくづく思った。飲み屋を出て、アジを少し分けてもらって持って帰る。とりあえず冷凍さして、あとは公子さんに任せた。
11/15 土
第2回目の「まちの落語会と講談会」の日。今日はお昼下がりの公演やし、早めに下北沢へ向かう。ポータブルスピーカーを買ったからだいぶと荷物が減って前よりは移動が楽になった。着いたら大道具に山さんと冨田さんが既に待機してくれてはって、今回は平台も持ってきてもらって高座は完璧!椅子を並べてスピーカーチェックして、2回目はやっぱりちょっと慣れて設営はスムーズにいった。今日は2人の女性講談師が来てくださった。公子さんが贔屓にしてはる神田紅純さんと田辺いちかさん。私も久しぶりに講談を聞けて嬉しかった。お客さんも久しぶりに会う方から前回も来てくださった方まで、色んな方がたくさん来てくださって楽しい会になった。
と、無事に終わって緊張の糸が切れたのか、帰りの電車で熱っぽくなる。もう無理かもと思ったところでたまたま駅のアイス自動販売機でシャーベットを発見、ちゅーちゅー吸って熱を冷やすとちょっとマシになった。残念ながら明日は小屋番、しかもイベントがあって出勤が早い。枕元には水分と鼻紙を置き、ともかく湯たんぽであっためながら寝て回復を図る。
11/16 日
責任感だけで起床、体はまだ少しだるいけど、大丈夫!と言い聞かせて演芸場へ向かう。しかもよりにもよって今日は着物パレードの付き添いで外での勤務が多い。なんとかかんとか乗り切ったけど、公演が始まって事務作業に戻った途端にむっちゃしんどくなって夕方に早上がりさしてもろた。食欲はこんな時でもいっぱいあったからともかくいっぱい食べて寝る!明日は久しぶりの休みやし、1日寝てなんとか治すぞ。
11/22 土
知人の展示に行くために鳥越へ向かう。御徒町から歩いていくと、ギャラリーのあるのは「おかず横丁」という商店街の中にあるらしい。なんとおいしそうな名前の横丁…!と心躍らせて進むと、佃煮屋さんにお味噌屋さんなど、ごはんのおともがあちらこちらで売っているではないか!ギャラリーの主の方にもこの横丁で売ってるおかずの数々を聞き、展示を後にしておかずを求めて色々と歩いた。悩んだ結果、結局老舗らしき佃煮屋さんのふりかけと昆布を買って帰る。帰ってごはん炊いて一緒に食べてみたら、もちろん絶品!そんなにうちから遠くないし、おかず横丁とはええ場所見つけた!!
11/24 月・祝
前職でお友達になった86歳の友、おたかさんのおうちへ久方ぶりに遊びに行った。少し前に電話がきて、ようやく夏がさったので遊びにおいでとのこと。楽しみにしてるね~と昨晩も電話があり、久しぶりに着物を来て埼玉へ向かう。家が近くなって喜多見から行くより半分の時間になって嬉しい。行きしなに、ちっちゃい花束をお土産に買って団地へ向かうと、数ヶ月お会いしていなかっただけで随分と老け込んでしまった気がして心配になる。自分が賄いの食べ過ぎで大きくなったのか、それともおたかさんがちいさくなったのか、隣に立つと少し身長差が大きくなった気がした。最初は近況的にたわいもない話をしてたんやけど、途中から時代劇の話やら映画の話になり、そうなると顔色がぐんと良くなって元気になるのが手に取るように感じられた。おでんを作ってくれてはって、私と一緒に話しながらやとひとりで食べるよりたくさん食べられたみたい。よかった~。なんじゃかんじゃと日が落ちるまで話をして、今度は演芸場へ観に行くわねと約束した。帰る時も、リハビリだからね、と途中まで歩いて送ってくださったりして、帰り道こけませんようにと何度も振り返りながら団地を後にした。
11/27 木
色々してたらもう千穐楽!今月は光のように走り去った。初日には覚えるのに必死になっていた劇団のみなさんもお客さんも、千穐楽にはみんな知ってる人になっておった。1ヶ月間お疲れさまでしたのご挨拶をして、大掃除をする。大量の荷物と共に、劇団は今夜遅くに次の場所に移動しはる。そして数日の間に次の場所での公演がまた始まる。大変な仕事やでな。
11/28 金
自分の用事と用事の間に演芸場が入り、怒涛の仕事の日々がようやく昨日に区切りがついた。おかぁはんと全然連絡取れてなかったんやけども、電話してみたら向こうもお休みの日で、なんと2時間も電話してしもた。内容はたわいもないことばっかし、11月なにしとったとか、おかぁがやっとる運動に座禅の話など色々と。
11/30 日
12月公演の初日。またいちから劇団のみなさんとお客さんの顔と名前を学ぶ日々が始まった。初日に全く分からんでも、楽日にはなんで分からんかったんやろ?と思うくらい、はっきり誰が誰だか分かるようになるからすごい。今日が一番よく分かってないんやけど、とにかくなんとなく顔を覚えていく。12月は休演日が多い、がんばらな覚える前に公演が終わってまうわ。