ラジオに出演した。
富山シティエフエムという、富山市をエリアとする小さなラジオなのだが、今週末から始まる「ウカマウ集団」の富山上映について、アフリカ文学研究者の村田はるせさんとともに、30分ほどお話しした。
10月3日から5日まで、ボリビアの映画制作集団ウカマウの全14作品をオーバード・ホール(富山市)で上映する。主催はカルトブロンシュという富山の映画上映グループで、私は企画スタッフとして今回の上映活動に参加している。2025年は、ウカマウがその活動を開始してから60年、彼らが日本の太田昌国さんらと協働関係をもってから50年、そしてボリビア独立200年、という節目の年なのである。「ウカマウ集団60年の全軌跡」と題した回顧上映が4月末に新宿K’sシネマで行われ、それを皮切りに大阪、松本、沖縄など約十の地域で全作、あるいはセレクト上映が続いている。富山上映には、太田さんや唐澤秀子さんも来てくださり、トークをする予定だ。
パレスチナに対するイスラエルの軍事攻撃がそうであるように、現在の世界の至る所に植民地主義的な秩序が見え隠れしている。いや、見え隠れどころか、丸見えのそれを人は知らんぷりしている、と言うのが正確だろう。ウカマウが描き続けてきた中南米の先住民をめぐる状況は、この植民地主義的秩序と地続きだ。歴史は一回一回清算されて繰り返すのではなく、1492年のコロンブスによる「新大陸発見」以降の世界の秩序が、現代の支配・被支配と構造的に連続している。ウカマウはこの出口のない連続性の中から、それでも火花を散らすように映像作品を世に送り出してきた。闇の中のきらめきを、富山の小さなホールで見てみたい。
気がつけば、それまでの茹だるような暑さは消えていて、日没とともにコオロギが鳴くようになっていた。企画を開始した時はまだ先のことと思っていたが、もう明後日に迫っている。ふと立ち止まると、時間だけが過ぎ去り、駅のホームに取り残されたような気持ちになることがある。大丈夫、しばらくすればまた電車は来ると思うのだが、やってきた電車の扉は乗り込む前に閉じてしまい、また駅のホームに取り残される。車両の中には、何人か乗客がいるらしい。うつむきながら、あるいは過去の方角を遠く眺めながら過ぎ去っていく彼ら・彼女らは、もうここにはいない人たちだ。車輪とレールのあいだで、小さな火花が飛び散る。その火花は、私が散らすのではなく、彼ら・彼女らを乗せて行ってしまう電車からほとばしるのだ。
ラジオでは、そんなふうには言えなかった。ただ、楽しんでほしいと伝えるだけで精一杯だった。時の列車が軋むたびにきらめく、あの微かな光をどう言葉にしたらよいのか、いまでもよくわからない。
*
10月はいくつかのイベントがある。ウカマウ上映はそのひとつだが、他にも10月24日(金)には文化人類学者で批評家の今福龍太さんに富山で講演をしてもらう。翌日25日(土)には射水市にあるLetterというイベントスペースで、今福さんの『仮面考』という書物をめぐるトークが予定されている。以下、お知らせ。
・今福龍太氏 公開講演会
「遊動、放擲、声――旅(テンベア)の途上で出会ったものたち」
日時:2025年10月24日(金)
16:45-(16:30開場)
会場:富山大学人文学部第四講義室 人文学部棟2階
予約不要、無料、一般参加歓迎
問合:ryofkshm[アットマーク]hmt.u-toyama.ac.jp
富山大学人文学部福島亮研究室
*[アットマーク]を@に変えてください。
・今福龍太『仮面考』(亜紀書房)出版トークイベント
「うらはおもて 心は面」
日時:2025年10月25日(土)
14:00-(13:30開場)
会場:LETTER(旧小杉郵便局)
富山県射水市戸破6360
参加費:1000円
問合:tembea.toyama[アットマーク]gmail.com
*[アットマーク]を@に変えてください。
要予約。お席に限りがあるためご予約をお願いします。