おれは運、ツキを信じない。
おれは「まずは無料でお試し」と叫んでいるCMを信じない。
おれは「こだわりのグルメ」と銘打った飲食店を信じない。
おれはあらゆる財テクを信じない。
おれは「自分らしく」と唱える本、人、その他を信じない。
おれは宝くじを信じない。
おれは五本指ソックスを履いている奴を信じない。
おれはPCの壁紙に風景写真を選んでいる奴を信じない。
おれは「ああ、もう、最高だったわ」という女の言葉を信じない。
おれは「たまにはそういうときもあるわよ」という女の言葉も信じない。
おれは脱いだスーツのジャケットを椅子の背に掛ける奴を信じない。
おれは「自己肯定感」という言葉を信じない。
おれは苦手な食べ物がたくさんある奴を信じない。
おれは「ああ、そいつとはおれも知り合いですよ」と言う奴を信じない。
おれは足を組んだ時にパンツの裾からたるんだ靴下が見える男を信じない。
おれは「人が好きです」と言う奴を信じない。
おれは食事の途中で「もうお腹いっぱい」とホザく女を信じない。
おれはホワイトボードに「会議」ではなく「MTG」と書く奴を信じない。
おれは会議そのものを信じない。
おれは「これだけの金額を寄付しました」と発表する人を信じない。
おれはワイシャツの袖をまくる奴を信じない。
おれはクラブのおねえさんたちを信じない。
おれは「なるほどですね」と相槌をうつ奴を信じない。
おれは「シェフの気まぐれサラダ」を信じない。
おれは合議制によるアイデアを信じない。
おれは「正義は勝つ」という言葉を信じない。
おれは紺色のスーツに茶色の靴を合わせる奴を信じない。
おれは「生きざま」という言葉を信じない。
おれは自分の顔やスタイルを美しいと自覚している奴を信じない。
おれは「クリエイター」「アーティスト」という肩書を信じない。
おれは電話になると異常なほど大声で喋るおじさんを信じない。
おれは「君のためを思って言っているんだ」と言う奴を信じない。
おれは「スタンフォード式」で始まるタイトルの本を信じない。
おれは「おまえだから言うけどさ」と言う奴を信じない。
おれは会社に出勤するとクロックスに履き替える奴を信じない。
おれは浅野内匠頭のようなワイド・パンツを穿いている女を信じない。
おれは「努力は裏切らない」という了見を信じない。
おれは「W58」と記されているグラビア・モデルを信じない。
おれは「尊敬する人物は父親です」と言う奴を信じない。
おれは「カワイイ」を連発する女を信じない。
おれは自分の勤めている会社の悪口を言う奴を信じない。
おれは自分の勤めている会社の悪口を一切言わない奴を信じない。
おれは話の長い女を信じない。
おれはすべての「老後」関連本を信じない。
おれは「お墓参りが楽しみになる納骨堂」という広告コピーを信じない。
おれは口がうまい男を信じない。
おれは口下手な男を信じない。
おれは立ち食い蕎麦屋で「どうぞごゆっくり」と言う店員を信じない。
おれはカーネギーもアドラーもドラッカーも信じない。
おれは「あと一杯飲んだら帰ろう」という言葉を信じない。
おれは「もっと自分を信じて」と言う奴を信じない。
おれは会議で「いま社長が仰ったように」と言い添えてから発言する奴を信じない。
おれは焦げ茶色のスーツを着ている奴を信じない。
おれは「むしゃくしゃしてやった」という容疑者の供述を信じない。
おれはパソコンを信じない。
おれは元気のないときに「元気出せよ」と声掛けする奴を信じない。
おれは「KPI」「KGI」などのマーケティング用語を信じない。
おれはそもそもマーケティングというものを信じない。
おれは「何かまた機会がありましたら」という言葉を信じない。
おれは腰の下までリュックを下げている奴を信じない。
おれは「座右の書はバロウズの『裸のランチ』です」と言う奴を信じない。
おれは「酔っぱらって覚えていない」と言う奴を信じない。
おれは印刷所が言う締め切り日を信じない。
おれはおれを信じない。