マルハラ

篠原恒木

最近はいろいろな「ハラ」が登場してきてハラハラしてしまうが、ついにここまで来たかというのが、ご存知「マルハラ」だ
若者はLINEなどで句点、つまり「。」がついたフレーズを威圧的に感じるらしい
ならばどうやって文章を終わらせればいいのか、それは「!」や「絵文字」を文末に置くのがコツらしい
なぜ「。」ごときでそんなにビビるのか訳が分からないのだが、おじさんとしては「ハラスメント」と言われれば、おとなしく彼らに従うしかない しかしですね、
「電車が遅れたので遅刻します」
そうLINEで送られてきたら、
「了解です!」
と返信するのか、それとも「了解です」のあとに笑顔の絵文字、あるいは親指と人差し指でマルを作った手の絵文字を添えればいいのか、いずれにせよおれとしてはどうにも収まりが悪い 「!」をつけると積極的に肯定しているような感じがするが、そもそも遅刻はよくないことだ 肯定してどうする それに絵文字を乱発すると、ひところは「おじさん構文」と揶揄されていたではないか
「。」でそんなに恐怖感を覚えるのなら、きっと彼らは読点の「、」にも怯えているのだろう そうに違いない この場合は「テンハラ」だ したがって次からの文章はヤングなキミにも威圧感を与えることなく、句点はもちろん読点も一切使わずに書いてみようと思う

会社内でキャビネットの上に置いてある段ボール箱を取る必要があったキャビネットは二メートル以上の高さなので脚立が必要だおれは早速脚立を用意してヒョイと上り段ボール箱に手を掛けた想像以上に箱は重く両手で持ち上げたその瞬間に体のバランスが崩れた脚立の上でよろめいたおれの体は重たい段ボール箱を抱えながら落下しそのまま床に転倒してしまったしたたかに左半身を打ち付けたおれは無様にもしばらく立ち上がることができなかったようやく体を起こしたが左膝と左の脇腹から胸にかけて激痛がある間抜けなことに段ボール箱は抱えたままだった落下転倒する前にあの重たい箱さえ放り出していればこんなことにはならなかっただろうにおれは木口小平かしばらくしても左膝とアバラの激痛はおさまらないトイレに行きパンツをおろして左膝を見たら派手に擦りむいている激痛はそのせいだったのだとりあえず膝は擦過傷で済んだようだ問題は左のアバラだ時間が経過してもちょっと息を深く吸い込んだだけで飛び上がるほど痛い仕方なくおれは整形外科に行ったレントゲン撮影の結果左肋骨にヒビが入っていると医師から告げられた精神は若いままなのだが肉体は自分が思っている以上に退化しいているようだ悲しい一か月前に左大腿筋膜の肉離れを起こしたばかりなのに今度は左肋骨だよくチェックすると左肘も擦りむいて出血していた踏んだり蹴ったりではないか帰宅してツマに言うと「まったくもう気をつけてね!」と叱責された悲しい

ヤングなキミたちにもこれなら受け入れるだろう そう思って前段を読み返してみたら自分でも意味が取れない そうかLINEの短文のようにすればいいのか やり直してみよう

会社内で
キャビネットの上に置いてある
段ボール箱を取ろうとしたのね

キャビネットは二メートル以上の高さなので
脚立が必要だったわけ(ニコッ)

なので脚立を用意してヒョイと上り
段ボール箱に手を掛けたのよ

想像以上に箱は重くて
両手で持ち上げたその瞬間に
体のバランスが崩れちゃった(汗)

脚立の上でよろめいたおれの体は
重たい段ボール箱を抱えながら落下して
そのまま床に転倒してしまったwww

したたかに左半身を打ち付けたおれは
無様にもしばらく立ち上がることができなかったよ

ようやく体を起こしたけど
左膝と左の脇腹から胸にかけて激痛が(涙)

間抜けなことに段ボール箱は抱えたままだったwww

落下転倒する前に
あの重たい箱さえ放り出していれば
こんなことにはならなかっただろうに!

おれは木口小平か!(笑)

しばらくしても左膝とアバラの激痛はおさまらないわけ

トイレに行きパンツをおろして
左膝を見たら派手に擦りむいているじゃん!

激痛はそのせいだったのよ(泣)

とりあえず膝は擦過傷で済んだようだけどさ

問題は左のアバラだよ!

時間が経っても
ちょっと息を深く吸い込んだだけで
飛び上がるほど痛い‼

仕方なくおれは整形外科に行ったよ(溜息)

レントゲン撮影の結果
左肋骨にヒビが入っていると
医師から言われちゃった(テへ)

精神は若いままなんだけど
肉体は自分が思っている以上に退化しいているみたい(苦笑)

悲しい(涙)

一か月前に左大腿筋膜の肉離れを起こしたばかりなのに
今度は左肋骨だよ!

よくチェックすると左肘も擦りむいて出血していた(焦)

踏んだり蹴ったりだよねー(怒)

帰宅してツマに言うと
「まったくもう 気をつけてね!」
と怒られた(涙)

悲しい(泣)

あれ? 意外と読みやすいではないか 文末の(涙) (笑) (ニコッ) (怒) (テへ) (泣) (溜息) (焦) (苦笑)などには それにふさわしいと思われる絵文字を入れればいいのだ 「マルハラ」「テンハラ」に悩まされているヤングなキミにも これなら威圧感もなく読んでいただけるに違いない 小説もこんな感じで書けば 若者の「活字離れ」が食い止められるかもしれないな いや 問題があるぞ ページ数がやたらと多くなり 分厚くて値段の高い本になってしまう。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。