アジアのごはん(85)グルテンフリーな食卓

森下ヒバリ

グルテンフリーの米粉ケーキがコンスタントにうまく作れるようになった。色々試作して、辿り着いたのが酒粕を入れて作る米粉マフィンや米粉パウンドケーキで、酒粕を入れると失敗知らず。酒粕はまだあまり使い方を極めていないけど、なかなか不思議で面白い素材だ。元はお米なのだけど、カビつけされ醸され絞られて、長い旅路の果てに酒粕に。

米粉ケーキはほうろうパッドや、ステンレスのパッドにクッキングシートを敷いて薄めのシートケーキにすると焼きやすい。

<酒粕入り米粉のケーキ>
A:
米粉180g(このうち20gをひよこ豆粉かココナツ粉、おからや黄な粉にするとなおよい)
片栗粉30g
ベーキングパウダー小さじ1と半分
重曹小さじ3分の2(モンゴル天然重曹を強力おすすめ)
以上をよくかき混ぜておく

B:別のボウルで
酒粕90g(ペースト状。固い場合は少し水を加えてやわらかくしておく)
バージンココナツオイル90g (固まっている場合は溶かす。オリーブオイルでも可)
卵2個と豆乳で300ml
てんさい糖100g
レモン汁(柑橘酢)大さじ1
ハンドブレンダーまたは泡だて器で、油が乳化してとろっとするまでよく混ぜる。

オーブンを180℃で予熱しておき、パッドやマフィン型の準備をしておく。
Aの粉ミックスにBの乳化した酒粕ミックスを混ぜ込む。すばやくパッドや型に入れ、オーブンで180℃10分~12分、その後160℃で10分焼く。生地が厚いと全体にもう少し時間がかかる。AとBを合わせたら、素早く焼くこと。発泡した泡が消えないうちに。

焼きあがったらオーブンから出してクッキングシートごと網の上で冷まし、ラム酒とメープルシロップかはちみつを混ぜたシロップを表面に塗る。
卵アレルギーなら、卵を抜いてかまわない。かわりにバナナの輪切りか潰したものを混ぜ込むとコクが出る。酒粕の匂いが気になることもあるが、半日もおけば消える。

米粉ケーキはわりとあっさりなので、薄く切って間にクリームなんかはさむとさらに楽しそう、と考えて前々から作って見たかったサワークリームを作ってみることにした。しかし、ヒバリは乳製品のアレルギッ子なのだ。ま、実験と思ってよつ葉の生クリームを入手して作ってみた。

サワークリームというのは、生クリームを発酵させたもので、濃厚でものすごくコクがある。味付けせずに、ボルシチにのせたり、タコスにのせたりもする。よく発酵したサワークリームにはちみつを混ぜ込んで甘くすると、もうメロメロになるほど美味しい。

生クリームに豆乳ヨーグルトを加えて発酵させ、干しブドウとはちみつを加えてクリームチーズのように固まったサワークリームを味見してみたら、はああ、う、うまい(泣)。もう一口とスプーンで2さじ食べた。コッテコテだが、これはあの北海道のマルセイのバターサンドのクリームそのものだわさ。などとうっとりしていたら、じわ~っと気分が悪くなってきた。濃厚なので、アレルギーが出るのも量が少なくても早かった。苦しい‥もう食べません。植物性生クリームというのも市販されているが、添加物てんこ盛りだし、まずいので、食べたくない。

くやしいので、豆乳ヨーグルトで何とかサワークリームが作れないかといろいろ試作してみたところ、こんなのができた。ココナツオイルに少し豆乳を足して乳化させるとバタークリームのようになるのは知っていたので、それをアレンジ。

<豆乳サワークリーム>
1 豆乳ヨーグルト300ml を3~6時間ほど水切りする。コーヒードリッパーと紙フィルターを使うと簡単。だいたい100gぐらいになればOK
2 溶かしたバージンココナツオイル30g~40gに、てんさい糖または、はちみつ大さじ1、白みそ小さじ1を加えてブレンダーでよく混ぜ乳化させる。水切りした豆乳ヨーグルト100gを加えてクリーム状になるまで混ぜる。好みでラム酒を少し加えても。
3 干しブドウを加え、冷蔵庫で冷やす。(干しイチジクなどを刻んでも)

まあ、こんなもんか、やっぱり生クリームに比べてコクが足りんなあと思いつつ冷蔵庫で一晩寝かせておいた。翌日、米粉ケーキを焼いて、薄く切って間に豆乳サワークリームをはさんでみた。

いただきま~す。こ、これは‥むぐむぐ。牛乳サワークリームとは別物でイケる! 酸味もいい感じ。寝かせたらコクがぐっと増していた。おいし~い! 濃厚なコクと酸味がありながら、生クリームから作るサワークリームより軽い。いくらでも食べてしまいそう。ケーキにクリームを挟んでラップに包んでから少し冷蔵庫で冷やすとケーキとクリームがなじんでおいしさが増す。

水切りした豆乳ヨーグルトに甘みを加えず、白みそ小さじ1、または塩ひとつまみとココナツオイルを加えてブレンダーで乳化させれば料理用の甘くない豆乳サワークリームが出来る。出来立てはとろんとしているのでそのままソースとして使っても。ココナツオイルの量はお好みで加減してください。

この塩味サワークリームを冷蔵庫に入れて熟成させておいたらやっぱりコクが増して、まさにクリームチーズやんか。キュウリやクラッカーに載せておつまみにもなる。クルミやコショウなどを混ぜて仕込んでも。豆乳サワークリームは、冷蔵庫に入れておいても少しずつ発酵がすすむので、1週間で食べきれない場合や、保存する場合は冷凍がおすすめ。

グルテンフリーでちょっとさみしいのは、うどんや中華そばを使った料理が食べられないことだと思っていた。でも、探せばあるんですねー。グルテンフリーの麺類をいろいろ試食して、スパゲティには南米の穀物キノア(キヌア)を使った麺(アメリカ製NOWFOOD 米・キヌア・アマランサス)が一番おいしく思えた。玄米粉をメインに使ったパスタはちょっと重たすぎ。

日本製(雑穀めん工房・新潟)で乾麺のきびの麺やあわの麺、三穀めんというのがあり、それぞれ食べてみた。三穀めんはスパゲティに、きびの麺やあわの麺は中華そば系の料理、焼きそばや冷やし中華に使える。小麦とそっくり同じテイストではないが、(その必要もないと思うけど)料理法に合った食感と味である。グルテンフリーを始めたときに「さよなら冷やし中華‥」と呟いたけど、外食できないだけで、食べられるうぅ。

お好み焼きも天ぷらも米粉メインで問題ないし、あとはうどんだけ。タイとラオスの米粉とタピオカ粉を使ったカオピヤック(クイジャップ・ユアン)という半生麺が、茹でて水洗いしたらうどんに食感がものすごく近いのだけれど、日本では手に入りません。スーパーに行ってみると、日本の米粉の麺も最近はいろいろ発売されていて、味も進化してきたみたいなので、今後に期待したい。

お米の国、日本で育って住んでいるのだから、小麦が主食な国の人たちに比べたら、グルテンフリーはいとも容易いはずなのに、毎日お米のごはんではやっぱりさみしく感じる。小さいころから給食ではパンと牛乳を毎日、麺はスパゲティや中華そばをしょっちゅう食べていたことを考えると、小麦と乳製品を日本に大量に売りつけようともくろんだ占領国アメリカの戦後の学校給食戦略はおそろしいほど成功しているのだった。