アジアのごはん(63)さよなら乳製品

森下ヒバリ

「え〜、これからはわが家の食事は、乳製品と肉類なしでいきます。動物性タンパク質は全体の5パーセント以下にしまーす」
去年の秋にタイの旅から日本に戻って、『乳がんと牛乳』(ジェイン・プラント著 径書房)、『葬られた第二のマクバガン報告上・中・下』原題は『The china study』(キャンベル博士 グスコー出版)という本を入手したわたしは、読み終わるとすぐにウチの同居人にこう宣言したのであった。
「え‥動物性って魚は?」「魚は放射能汚染されてないのを、食べるけど減らす。うちは魚食べ過ぎ」「え〜〜、ちょっと待って。じゃあカレーはどうなるの? それに‥親子丼ぶりは? あ、鶏肉と大根の煮込みは‥」「肉がなくても作れるから大丈夫!(ウソ)」

これまでは料理に肉が入っていると、けっこうイヤそうによけて食べていたくせに、なんだこの同居人の反応は。
「肉はイヤなんじゃなかったの」「‥そんなことない」もともと、あまり肉を食べないのに、肉なしで行く、とか言われると妙な反発心が生まれるのかもしれないな。乳製品については、食卓に出なくてもとくに不満はないようであった。

半年前に「視神経腫瘍」と診断されたワタクシは、タイのミラクル植物マロム(モリンガ)で薬草治療(カプセルを飲むだけ)するとともに、この際、食療法も試みることにしたのである。じつはヒバリはこの三年ほど前から鶏肉に拒否反応が起きていて、食べる回数が激減していたので、鶏肉は食べなくても平気だ。というか、食べられない。かわりに豚肉を食べていたのだが無理して食べることもない。牛肉はもともとあまり食べていない。

インドに旅するとベジタリアンが多く、ベジの店しかない町もあったりして、肉なし生活が続くことが多い。初めは「肉食べたい」などと考えるのだが、しばらくすると忘れていて、しばらくぶりに食べると、「ケモノ臭い」「気持ち悪い」「体が重い」などと思う。肉は食べないでいると、特に欲しいと思わなくなるのは、インドの旅で経験済みだ。乳製品は、アレルギーもあるので地道に減らしてきていたが、少しならいいかと、ピザとか生クリームのケーキをたま〜に食べていた。しかしアレルギー以上に、乳製品には大きな問題があることがはっきりしたので、この際きっぱりとやめることにした。

最近、まわりで「がん」が多い。女性では乳がん、大腸がん。男性では食道がん、大腸がん、肝臓がん‥。放射能はどんどん放出され続けているので、がんのリスクが上がっているのは明らかだ。これまで以上に免疫を高め、がんにならない食生活をしていく時が来た、と視神経腫瘍と言われたときに思ったしだいである。そこで、参考になりそうだと思って読んでみたのがさきほどの二冊。この二冊を読んで、はっきりとしたのは「乳製品は体に悪い」「動物性タンパク質の食べすぎは体に悪い」ということである。

乳製品に関しては、わたしには乳製品アレルギーではあるのだが、口においしいので、たまにちょっとだけ食べていた。食べたときの感じで、アレルギー以外にも何か問題があるとは感じていた。比喩でなく胸のあたりが何かモヤモヤするのである。それらの疑問を明確にしてくれたのが『乳がんと牛乳』だ。

乳製品の何が問題なのか。それはミルクに含まれる子牛のための成長ホルモン、ホルモン様物質、さらに工業化された牛乳の生産過程で牛に与えられる遺伝子組み換え成長ホルモン・抗生物質など内分泌かく乱物質が、大きな問題だったのだ。プラント博士は「乳製品が乳がんと前立腺がんの原因」と断言している。

栄養のある飲み物としてしかミルクを考えていないと、愕然としてしまうことだが、ミルクは当然ながら「子牛」を育てるための栄養と免疫物質、そして牛の成長ホルモンなどの様々なホルモンで出来ている、あくまで子牛のための飲み物であり、子牛用ホルモン・カクテルなのだ。ちなみに子牛は1日に1キロの体重を増やす。人間の赤ん坊は1か月に1キロ増である。子牛が1日に1キロ育つためのホルモンがどれほど入っているのか想像してみてほしい。あなたはそれを飲めますか? もちろん、牛の成長ホルモンがそのまま人間に成長を促すわけではないが、たいへんな影響を及ぼすことは明らかだ。ミルクに含まれる牛の成長ホルモンが乳がん・前立腺がんに働きかけてがん細胞が分裂・増殖することがすでに研究で確かめられている。最近は乳がん・前立腺がんだけでなく他の部位のがんにもこの牛の成長ホルモンが作用することが分かってきている。

著者のジェイン・プラント博士自身が乳がんになり、自分で原因と治癒方法を求めて辿り着いた結果が「すべての乳製品を絶つ」ことだった。この本は物語としてもなかなか面白いので、乳がんになってしまった方にはぜひ読んでほしい。乳がんになってしまっても、「すべての乳製品を絶つ」ことで、がん細胞が消滅し、再発もしない、というのだから、試してみて損はないでしょう。ヒバリとしては、これにさらに寄生虫駆除、という項目もぜひ付け加えてほしいと思うが。

「わたしは牛乳なんか飲んでいない」という人の食生活を見ると、生の牛乳を飲んでいなくても、牛乳のヨーグルトを食べる、ミルクコーヒーを飲む、トーストにはバターを塗る、チーズを食べる、生クリームの入ったお菓子、バターやミルクを使ったお菓子をしょっちゅう食べているのに、自覚していない人がかなり多い。この間も友人にその話をしていたら、「牛乳は飲んでないよ〜」と言ったすぐ後に「この紅茶、濃いね」といって紅茶に牛乳を注いでいたのには笑った。牛乳をコップに注いでそのままゴクゴク飲む、ことは確かにしていないが‥。市販の加工食品、お菓子、スナック類には乳成分が含まれていることが多いので、要注意だ。ケーキやミルク菓子なら分かるが、柿の種にも入っているのには驚いた。風味をよくするためであろうか。

発酵食品は体にいいからと、牛乳ヨーグルトをせっせと食べている方は多いと思うが、実はそれは乳がんへの近道なのかもしれない。ヨーグルトは豆乳で作ってほしい。それが面倒なら、牛乳ヨーグルトはきっぱりやめて、ちゃんと作られた納豆や漬物、みそなどを食べよう。豆乳は、製品を選べばかなり違和感なく牛乳の代わりになる。そのまま飲むとお腹が張りやすいが、加熱すると消化が良くなる。

しかも、牛乳はたとえ血液検査でアレルゲンと出なくても、ぜんそくをはじめとする様々なアレルギーの原因とも考えられている。一般の牛乳はホモジナイズドといって脂肪分を大変小さな分子に加工している。この分子が牛乳のタンパク質をくるんで、本来は血管の中に直接入るべきでない乳タンパクが血管中に入ってしまう。このために免疫異常のさまざまな病気が起きるというのだ。免疫異常の難病の方も、乳製品を一切絶つ食生活を試してみる価値がある。

牛乳は体に良い、というのは幻想なのである。
本当は男もだが、乳がんの切実さを考えると、断固、言いたい。
「女たちよ、すべての乳製品をやめなさい」と。そして豆乳を料理に使おう。

かつて学生の頃、ぜんそくになって入院したヒバリは、医者に言われた。「タバコとお酒やりますか?」「はい、両方」「どちらかを止めなさい。そうしないと死ぬよ」「‥‥タバコやめます」死ななかったが、ぜんそくは治らなかった。あのとき、医者はこう言ってくれればよかったのだ。「タバコと乳製品を止めなさい」と。十年ちょっと前に乳製品の摂取量を激減させてから、気が付けば一度もぜんそくの発作が出ていない。
乳製品を止めますか、それとも…。