十二月

仲宗根浩

十二月、うちのお嬢さんは制服の衣替えで冬服で初めての登校の日、最高気温二十八度。朝から暑いなかご苦労様の登校。この島で冬服というのは必要か疑問。夏服のままで上から何か羽織ればいいのではないか。十二月に初めてクーラーを使う。冬休みに入ると本土の寒波は沖縄にもきて最高気温十六度。でも少し重ね着で暖房要らず。

「ヴァン・ダイク・パークス」の名前を地元紙で見る。「ロックの重鎮」とあったけど異端、奇才、であり王道にはいない人だろと言いたくなる。ここらへんで新聞をもひとつ信じることができない自分がいる。

最初にヴァン・ダイク・パークスの名前を知ったのは、はっぴぃえんどの「さよならにっぽん、さよならアメリカ」だった。ライ・クーダーの音源を色々集めていたら1stアルバムのプロデュースしていたり、ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンド」が初めてCDになったとき何度目かの再評価があったがその盤を入手したあとすぐ回収になり店頭から消え、暫くして再発売された。その後の「スマイル」に作詞家と参加したヴァン・ダイク・パークス。アルバムは完成されず、海賊盤で流通していたので聴いたりしたが所詮海賊盤、未完成の音。レコード屋で働いているときにブライアン・ウィルソンといっしょの「Orange Crate Art」が発売されたときは毎日のように聴いていた。後でこのアルバムのバジェットが少なく、ほとんど打ち込みだったと知ったが、今聴いても全然飽きない音をしている。うちの上の子供がまだ奥さんのおなかの中にいる頃、東京にいた二十数年前。

記事の内容はヴァン・ダイク・パークスがホワイトハウスへ辺野古埋め立ての件で署名をしたというもの。署名を始めたのはハワイの沖縄の移民四世。このことは知らされない。インスタグラムで拡散をしたタレントはネットで叩かれ、テレビでも批判されたり、と沖縄に関して何か発信するといろいろ言われる。県民投票をしないと決めた自治体は分断を生むと言うがその決定がすでに分断を生んでいる。今住んでいるところの議会も県民投票にかかる予算を否決。市長は議会の決定は重いという。県民投票の署名は重たくないんだ。

ちまちまと埋め立ては進む。復帰したあと島の西側はどんどん公共工事で埋め立てをして、昔の海岸線を失った。今度は東側がどんどん埋め立てられる。そんなことをしながら自然遺産を目指す。これほど遺産に値しないことをやってきているのに。