菊酒、カーウガミ

仲宗根浩

ここ最近、鼻の中がかさかさする。乾燥してきた。これで秋だ。秋になった。秋になったからといってもTシャツでないと暑い。クーラーを使わず、扇風機だけで過ごせるのが私的に定義するここでの秋だ。晴れの日、日差しは強く、少し日向にいたら日焼けする。でも風は涼しくなっている。

所用で糸満まで行く。片道三十数キロ。行き先は市役所、通り過ぎることしかなかったので滅多に使わないカーナビを設定する。糸満市内に入ると市役所の示す標識とカーナビが案内する方向が真逆になっている。うちの中古車のナビは2001年版、ナビ上では道無きところ走るのはよくあること。標識のとおりに行くと立派な新しい市役所に着く。用事を済ませたあとに最近多い、大きな野菜の直売所に行く。こういうところにも観光客がいる。ドラゴンフルーツが空港の三分の一の値段で売っていればそれは来るはな。隣りに魚の直売所もできている。ここら辺はどんどん埋め立てられ近くにアウトレットモールや新しいショッピングセンターがあり、昔の市街地は他のところと同じようなシャッター通りと化している。

何年ぶりかで九月九日、ウガミ(拝み)に行った。
旧暦の九月九日(十月七日)は仏壇やヒヌカン(火の神)に菊酒をお供える。それと集落で共同で使っている井戸や川を拝む、カーウガミの日でもある。戦前に親の世代が水汲みに行った川は基地の中にある。九月十一日の事件以前はゲート前に車で集まり、手続きが済むと基地の中にある拝所に行っていた。基地に入ることも手続きが難しくなったのでその拝所は基地の外に移され、碑が建てられ、今ではそこに集まるようになった。隣にはアシビナー(遊び庭)の碑もある。それぞれの碑に線香を供え、手を合わせる。菊の葉が浮かぶ泡盛の杯をまわす。天気が怪しくなったので片付け、昼頃には解散した。こういう行事もいつまで続くのだろうか。当時、その場所の記憶がある人は何人くらいいるのだろうか。代がかわり、参加するひとも少なくなり、当時の記憶がある人も少なくなる。