八月、ニーブターとR&Rの日々

仲宗根浩

八月になってへそのあたりが赤く腫れてきて、できものになった。ニーブター(できもの)は八月七日(旧暦七月七日)の墓掃除に行く前つぶれ、テンプス(へそ)に絆創膏を張る。絆創膏を張ったあとは、最近ごぶさたしていたCD鑑賞ばかりの状態が続いた。きっかけは久しぶりに買ったブツ、チャック・ベリーのチェス・レコード時代のコンプリート集で五千枚限定の四枚組。もうリアルタイムの音楽にはほとんど興味がなくなっている。

音源もダウンロードで購入する世の中、欲しいものはカタログに無いしデジタルのファイルよりちゃんとケースや紙ジャケットに入ったブツがいい。この盤の情報を得て国内で販売されているか調べると二万七千円! おいおい、アメリカのレーベル直販のオンライン・ショップでも送料込みで八十三ドル弱だぞ。すぐさまレーベルのショップでカゴの中へクリック。二週間くらいしてブツが来ました、ブツが。ケースは四つのトレイを折り畳むようになっている。畳んだあとは開かないよう、ファイル入れのように紐を巻きつけて、と凝っている。英語のブックレットに使われている写真は当時のもの。チャック・ベリーが持っているギターはギブソンのESー350かなあ、でもピックアップはシングルコイルのPー90のもあるから1955年以前のモデルか? 映画の「Hail Hail Rock’n Roll」で音合わせの時、エリック・クラプトンが使ったもの? などとギターの本を調べ、DVDの写真で確認したりしながら聴く。ライヴ音源でテンポがおそい、いないたいシャッフルで演奏される「Roll Over Beethoven」、クレジットを見るとカウント・ベイシーがバックをやっている。映画「真夏の夜のジャズ」でも同じ組み合わせがあるそうだが、記憶がない。R&B歌手のバックも数々行っていたベイシーだけど、チャック・ベリーの8ビートについていけてない演奏。他にはバックヴォーカルにマーヴィン・ゲイの名前を見つけたりと楽しい。しかしこの五十年代の音源、チャック・ベリーのギター、相棒でピアノのジニー・ジョンソンの演奏、音ともいい。当時のチェスがいかに洗練された音をつくっていたかがわかるし、スタイルも多様。ただ、ただ、かっこいい。チャック・ベリー、1926年生まれだから大正十五年、六月に亡くなったボ・ディドリーは1928年生まれ昭和三年。ほとんど親と同世代だ。

幸福な音にひたった八月も二十四日にエイサー大会が終わると、やがて涼しくなった。窓から入る風も違うし、雲の形も変わった。昼もクーラー全開でなくても過ごせる。そうすると高校野球、お盆、オリンピックが遠くにいってしまった。