新北風(ミーニシ)

仲宗根浩

最近活字を読むのが段々と辛くなってきています。文庫本だとかなり厳しい。紙ジャケ仕様のCD再発ものだとお手上げ。まずジャケット裏のクレジットが読めないし、同梱されている解説も無理。今年になり急に来た老眼です。もともと近視のため読めない場合は眼鏡をはずし、近付けて読む。目は疲れる。試しに子供の虫眼鏡を使ってみたがページ全部を拡大してくれないので虫眼鏡も動かさなくていけない。面倒くさい。余計に疲れる。よって余程内容が読むその日、その時間でおもしろいと思わない場合、またはその時自分に根性がない場合、本は置かれたまま。図書館で借りたものは途中で返すことになる。窓口で借り待ちの人がいないと確認できれば再度同じものを借りる。

図書館へは歩いて十五分もかからないくらい。家から出てゲート通りを横断し、手書きの「BEER $3.00 YAKITORI $5.00」の貼り紙を横目に飲み屋街の中の町を居酒屋やスナックの看板を眺めながら抜け、図書館まで行く。この前、「パブ B・Bキング」という看板を見つけ「流れている音楽はスクィーズ・ギターの三大キングに、オーティス・ラッシュ、バディ・ガイのみという頑固なブルースの店ではなかろうか、、、」と妄想しつつ(看板がピンク地に白抜き、書体もイタリックだったのであり得ないのは承知)、以前はあった、何故、コザの中の町で「スナック中目黒」なのか、と不思議に思っていたあの看板はどこにいった、と午後、人気のない通りを馬鹿なことを考えながら歩いていると、いつの間にかミーニシが吹き秋になっていた。

十月頃に吹く北東強めの風を新北風(ミーニシ)と言う。沖縄大百科事典には九月頃、とある。今年は十月十五日にミーニシが観測されたようで、この風が吹くと秋、ということになる。十月になってしばらくすると、寝る時に扇風機をつけることがなくなり、昼は家の中にも涼しい風が入ってくる。タオルケットかけるだけでは段々寒くなったとおもったら風邪をひき、しばらく寝込んでいると、うえの子の小学校最後の運動会。蝉がまだ鳴いている。PTA参加の競技に参加するため入場門で待っていると、日射しは強い。天気がいい日の正午過ぎは暑い。昔、自分がこの小学校に通っていた頃、教室にクーラーなどは無く、体育館もプールもなかった。児童数は千人を軽く超えていた。学校の近くにはトタン屋根の家がたくさんあり、豚小屋もあった。今は校舎も建て替えられ、ほとんど風景は変わった。通ったのは三年間。復帰の翌年に熊本に引っ越した。