半径ほぼ三百メートル

仲宗根浩

ここは沖縄です。歩いてすぐ、白い砂浜、海があるわけでもなく、まわりはどこの地方でもよくみるシャッターをおろしたままの空き店鋪が多いアーケードの商店街。すこし違うのは近くに空軍基地があることくらい。昔は兵隊さん相手の店ばかりだったがいまは数えるほど。六月までは職場も自宅から歩いて二分とかからない場所だったので、生活するうえでの行動範囲は半径ほぼ三百メートル以内でほとんどのことが済んでしまう。飲み食いするところ、趣味道楽関係の店(CD、楽器屋)、家電量販店(ここでパソコン関係のものは全部揃う)など。これに出無精がかさなると、車を運転するのも月に一回あるかないかで遠出もしない。休みの日、暑くなると外出もめんどうになり軽い引きこもり状態。これから行動範囲がどれほど広げられるか。自転車のギアをいつなおすかにかかっている。

で、最近本屋がなくなったんです。わたしのささやか生活圏内から。十年前、二十数年ぶりに沖縄にもどり生活をはじめたころは、いわゆる大型書店、そんなにひろくないながらも二階フロアーがあり、文具もそろえた書店、昔から商店街にあるこじんまりとした本屋さんと三軒ありました。それが、大きいほうからなくなり、ついに最後の商店街にある本屋さんが閉店すると電話で連絡がありました。その本屋さんには隔月刊のブルース、ソウルの雑誌が定期購読とういうシステムがなかったため、取り寄せてもらっていて、唯一、購読している音楽雑誌です。「今回は店を閉めるためこれが最後になります。」と。取り寄せてもらっていた雑誌も創刊号から購入しているのでこちらも意地で買い続けているところもありますが、こうなると注文取り寄せをしてくれる本屋さんというのが歩いていける距離にないのでネット購入するか、音楽雑誌も取り扱っている楽器屋でお取り寄せが可能か問い合わせるしかない。小さい本屋さん、どんどんなくなってきてます。

さいきん、ずいぶん減ってきたような気がするのが、ごきぶり。こっち来て当初、夜遅くアーケード街を歩いているとごきぶり(方言ではとーびぃーらぁ)がよくわたしめがけて向かって飛んできたが、最近そういうこともない。ひさしぶりに台所仕事をしていて、大きめのボールを出そうと、ふだんあまりあけることがない、シンクの下をあけ、ボールを出すと底にはカラカラに乾燥した三匹のごきぶりが仰向状態。大きさは三センチ足らずくらいの小ぶり。ボールは取りあえず、ごきさんを取り除き、きれいに洗い、消毒する。ここでは、やもりは毎晩鳴き、ごきぶりはどこでも出る。台所大掃除、そろそろ。その前にCD、本、雑誌、カセットテープ他もろもろのガラクタ整理をやれと、言われる。