6
里の者は
この子の祖父は
生きているのやら
死んでいるのやらと言うが
この子の祖父の消息は
わたくしが よく知っている
ほかでもない わたくしこそは
この子の祖父なのだから
この子の祖父であるわたくしが
わたくしを作って
わたくしのなかに入ったのだから
7
ようよう
ここまで来た
ここまでが
わたくしの来歴
身を捨てて
このかたい木に変じたわたくしの来歴
里を捨てて
森の奥に分け入り
森に弾かれた者の来歴
その折りに 弾かれまいと
しがみついていた木もろともに
飛ばされたところが
たかのもり
多可乃母里と記された
ことのはの土地
まだこの子に会うまでの日月を
指に折ることすらできないころにまで
さかのぼり
さかのぼる
ことのはのとち
たかのもり
多可乃母里
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