仲井戸麗市(チャボ)の洋楽カバー

若松恵子

古井戸、RCサクセションのギタリストであった仲井戸麗市(なかいどれいち)、通称チャボが有観客のライブを再開した。同じ時代を生きて、現在進行形の彼の音楽を直接聴けることを幸せなことだと思っていたので、有観客のライブ再開はとても嬉しい。

南青山のライブハウス「曼荼羅」で、5月26日の第1回めは、梅津和時、早川岳晴、RCサクセションのドラマーの新井田耕造をゲストに、久しぶりにチャボがエレキギターを弾きまくる、しびれるバンドナイトだった。(かっこよかったな~チャボ)

そして2回目の有観客ライブが、6月23、26、27日の3日間、全曲カバー曲を演奏するソロライブとして行われた。コロナ感染に注意しつつ観客数を抑えなければならないので、聴きたいファンがみんな来られるように3日間のライブとなった。

洋楽のカバー曲は、著作権の問題で配信では演奏できないようで、今回は有観客のみで、そんな制限は気にせずに、チャボのカバーをたっぷりと聴くことができた。優れたミュージシャンは、みんなカバーの名手だけれど、チャボもそんなミュージシャンのひとりだ。愛してきた曲を、自分を通過させて、今度は自分の表現として演奏するのがカバーだから、原曲の素晴らしさにチャボの魅力が加わって、本当にしみじみ味わい深いのである。埋もれた名曲を発掘して磨いてみんなに届ける、そんな役割もカバーにはある。

洋楽のカバーに彼は日本語詞を付けるのだけれど、ほとんど直訳ではなくて、彼オリジナルの歌詞が歌われる。原曲通りでないと言っても、決して替え歌ではなくて、原曲の持つスピリットが、日本のロック少年にはこんな風に共感されたよという意訳で、そこも彼のカバーの魅力となっている。演奏の合間に彼が語ることが、歌にさらなる陰影を加える。

ビートルズのイエスタディは、「昨日という夏、夏という人生」と歌われる。ボブ・ディランのアイ・ウォント・ユーは、「アイ・ウォント・ユー、会いたいぜ」と歌われる。昔から知っている歌が、チャボのカバーによって、今再び新たに胸に届く。知ってる曲をみんなで大合唱とはいかない、とてもとても個人的な、音楽空間なのである。大勢に聴いてもらいたい、もったいないと思うけれど、曼荼羅に出かけて行って、直接聴くのが一番良いのだ。

有観客ライブが再開されて嬉しい。今後も貴重な機会をとらえて出かけていきたいと思っている。