時代が令和に変わって、最初に飛び込んできたニュースが遠藤ミチロウの訃報だった。お祭りムードに水を差すような、最後までミチロウらしいなという感じがした。
浦和の古本屋で、パーカッションの関根真理と結成したばかりのユニット、ハッピーアイランド(福島のことらしい)を聴いた夜が最後になってしまった。アコースティックギターで歌うミチロウにやっと間に合って、これからを楽しみにしていたところだったから、彼の歌をもう聴くことができないのは本当に残念だ。
その夜、終演後に「セットリストをください」と話しかけた若者がいて、「セックスしてください」と言われたと聞き間違えたミチロウは、絶句してしまった。聞き間違え方の経路もミチロウ独特だなあと思うけれど、きっと、一瞬、本気でどうしようかと迷ったに違いない、そう思うと忘れられないエピソードだ。日経新聞の追悼記事で渋谷陽一が「人柄の良さ」と表現していたけれど、遠藤ミチロウはそういうやさしい人だった。
10月14日に、渋谷のクラブクワトロで追悼ライブ「死霊の盆踊り」が開催された。年代も音楽スタイルも多様なメンバーが集まって、ミチロウの世界の幅の広さを改めて感じる5時間だった。ミチロウなしのMJQ(山本久土とクハラカズユキ)と羊歯大明神(山本久人、関根真理、石塚俊明)の演奏が心に残った。音頭をギター1本で支えていた山本久土が、ミチロウの代わりに歌った。ミチロウのスピリットは、彼が継いでいくんだなと思った。
来場者に配られたパンフレットには、丁寧につくられた年譜が載っている。ヒッチハイクで山形から九州に旅行する、頭脳警察や友部正人のコンサートを大学で企画する、大学卒業後にネパールなど東南アジアを1年間放浪する・・・。初めて知る若き日のミチロウの足跡。年譜に添えられた若いポートレートは、女の子みたいな髪型で、笑う目元が本当にやさしい。