麗蘭、京都

若松恵子

京都の蔵づくりの老舗ライブハウス、磔磔(たくたく)に麗蘭を聴きに行った。メンバーは、仲井戸麗市(Vo,G)、土屋公平(G,Vo)、早川岳晴(BASS)JAH-RAH(ジャラ、DRUMS)。RCサクセションの仲井戸麗市とザ・ストリート・スライダーズの土屋公平がお互いのバンドの休止期間に始めた麗蘭。1990年の結成依頼、磔磔は特別な場所だ。コロナでのお休みを経て、昨年から有観客での年の瀬ライブが再開された。

仕事の緊張をほどいて、日常を離れて、京都にでかけていく12月30日。大掃除をすませた京都の街並みが清々しくて、静かで、そんなところにも魅かれて通い始めて15年を超えた。今年の京都は観光客が多くてザワザワとしていたけれど、観光バスが止まらないような寺社仏閣はひっそりとして、磨きこまれた古い建物や庭の緑が冬の陽に光っていた。

ライブハウス磔磔も今年の春50周年を迎えた。有名なブルースマン、ソウルマンの来日ライブや日本のロックバンドの伝説的なライブを数々行ってきた場所だ(履歴を見てたらカラワン楽団もライブをしている)。蔵に音楽の神様が住んでいるから磔磔は音が違う、かつてメンバーがそう語っていた。磔磔の1年の最後のプログラムを任せられる矜持と責任、そんな事を感じさせる全力を注ぎこんだライブだった。

今年のタイトルは「ROCK&ROLL Hymn」。ロックの讃美歌だ。祈るのは愛と平和。アンコール前の本編終了後にビートルズの「愛こそすべて」が流された。終演後には、「ホワッツ・ゴーイン・オン」だった。世界の様子は、手放しでただ「イエー」って叫んで済ませられる状況ではなくなってきたのだ。ロックに打たれてしまった者としては、「戦争はしかたがないことなんだ」なんて決して思えないし、思いたくない。ビートルズが最初の衛星放送で歌ったように、「愛こそ」がすべてなのだ。ロックを聴いて得たその確信を、手放さずにいたいと思う。仲井戸麗市のなかにも、土屋公平のなかにも偉大なブルースマン、ロックスターのスピリットが流れ込んでいる。そのスピリットをもって演奏された「ROCK&ROLL Hymn」。愛と平和と言い続けるためにロックが必要だ。日本のために戦争が必要だと言い出しているかっこ悪いやつらと対峙する感性を持ち続けるために、あきらめずに本物のロックを聴く。