残念ながら、ビートルズと出会った!と思える鮮烈な体験は無い。「ヘイ・ジュード」は吉永小百合が出ていたドラマ「花は花嫁」の主題歌だったし、「シー・ラブズ・ユー」はエドウィンのコマーシャルで知った。
14歳のころに繰り返し聞いていたのは、ビートルズに大きな影響を受けた日本のバンド「チューリップ」だった。ビートルズみたいなチューリップの曲を、原曲より前に好きになってしまったのだ。アビイロードのB面の最後のメドレーを聞くと今でも胸がいっぱいになるけれど、これまでところどころ聞いてきたのがビートルズだった。
今年の4月28日に片岡義男さんの新刊『彼らを書く』(光文社)が出版された。最初の彼らであるビートルズのDVDを取り寄せて休日ごとに家で見ている。リンゴスターがフューチャーされた映画「That’ll Be The Day」から始まり、「エドサリバンショウ」、エドサリバンショウに出演するビートルズを追いかける3人のファンの女の子たちのコメディ「抱きしめたい」、ハンブルグに出かける前までのジョンレノンを描いた「NOWHERE BOY」、ハンブルグ時代を描いた「BACK BEAT」、初めてのアメリカツアーのドキュメンタリー「THE FIRST U.S VISIT」と見ていって、ビートルズと出会いなおした気がした。
劇映画とドキュメンタリーと混在しているのだけれど、どの作品にもビートルズというもののエッセンスがあって、それらの作品を重ねて見ることでビートルズの存在がより身近なものになった。エドサリバンショウに至るまでの道のりを知ってから見ると、輝くような笑顔で演奏する彼らの姿は、また違った印象にうつる。
『彼らを書く』に紹介されている作品は、さりげないけれど、ビートルズを良く描けているものばかりなのではないかと思う。本の帯に「DVD31作品のなかに、いまも彼らはいる」とあるけれど、その通りだ。
今日は6月30日。夜になっても雨を含んだ生暖かい風が強く吹いている。1966年6月29日に、珍しく関東を直撃した台風の影響で10時間遅れてビートルズは羽田空港に着いた。来日公演の映像を残念ながらまだ見ることができていない。でも、今年の私の6月は、ビートルズの6月になった。