MY LIFE IS MY MESSAGE

若松恵子

ロックバンドHEATWAVEの山口洋が、東日本大震災の直後の2011年4月に福島県相馬市の人々とともに「町とこころの復興」を目指してMY LIFE IS MY MESSAGEというプロジェクトを立ち上げて活動している。友人が相馬市に住んでいたことをきっかけに(確かレコード屋さんだったと思う)相馬市という具体的な町とつながって、自分にできることは何かと悩みながら支援を続けてきたプロジェクトだ。自分の本業である音楽を活動の軸に、相馬に暮らす人たちを元気にしようと、チャリティコンサートや美空ひばりのフィルムコンサートの開催などをしてきた。あわせて、賛同してくれるミュージシャンと相馬以外の地でもMY LIFE IS MY MESSAGEのタイトルのもとにライブをしたり、野外フェスに出演しながら相馬を応援する仲間を広げてきた。募金を集めて何かをプレゼントするとか、再建するとか、分かりやすい目標のようなものがあるわけでは無いようなので、継続していく事自体難しいことだったろうな、と思う。ライブのチケット代と支援のお金が直結しているわけでもないので、普通のライブとどこが違うの?と言われてしまうかもしれないとも思った。

6月28日に、8年目を迎えるMY LIFE IS MY MESSAGE2019のライブを見に行った。今回の出演者は山口洋と2013年からずっと参加している仲井戸麗市の2人。それぞれのパートと、いっしょに演奏するパートの充実した3時間だった。このライブに対する2人の思いが静かに、静かに伝わってきて余韻が残った。

震災から8年経って、直接相馬に行ってしなければならないことも少なくなってきて、誰かのために汗を流すことよりも自分の持ち場でしっかり音楽をすることこそが重要になってくる。ガンジーの言葉を引用したプロジェクト名なのだから、そういうことなのだけれど、支援活動としてはますます間接的になってきて、それはそれで難しい挑戦になるだろうなと思う。でも、続けてほしいなと心から思った。自分たちの音楽を精一杯鳴らすこと、そのことでまず目の前にいる人たちを元気にする、そして「あの日のことを忘れない」という思い(メッセージ)を唄に込めて伝える。音楽に、唄にどれだけの力があるのだろうかと迷いながらも、自分たちが一番うまくできることで役に立ちたいと思っている…そんな誠実さを2人の姿から感じた。彼らの音楽を聴き、心打たれるという、直接には相馬への支援になっていない参加の仕方ではあるけれど、私も見続けていきたいと思っている。

自分と同じように日常を大切に生きているたくさんの人への連帯の気持、原発事故の責任がきちんと取られていないという不正義への怒り、それぞれの人生を自分の好きなように輝かせて生きようという励まし、歌詞に直接うたわれているわけではないけれど、そんな大切なものを音楽から感じた夜だった。