4月から職場でGパンが禁止になる。どんな来客に対しても”ちゃんとした人に見えるように”するためだそうだ。時代遅れなのか、そういう時代だからなのか、ちょっと判断しかねるが、勤め人は、”どんな人に見えるか”を会社に要求されるから、つまらない。仕事を通して自己表現、だなんてちょっと思っていたけれど甘い考えだった。
『ボブ・ディラン ロックの精霊』(湯浅学 岩波新書 2013年11月)を読んでいたら、1967年のサマー・オブ・ラブについて書かれている章で、ヒッピー文化について「平和を求め無抵抗で古い秩序をなしくずしにしようとする無政府主義的互助思想を実践するボヘミアン文化」だと湯浅氏が注釈していた。この定義を読んで、私が理想としているのはまさにヒッピー文化だったのだ! と発見した。
「古い秩序をなしくずしに」しようとしているのだから、ヨレヨレでふわふわなのは、あたりまえなのだ。ちゃんとしているようには到底見えないけれど、互助の気持ちにあふれ、ひとつの国に捉われてなどいないボヘミアンみたいなのが好きなのだ。この事がわかっていたら、Gパン禁止に反論できたのにと今は残念に思う。
そんなバカな話は別にして、『ボブ・ディラン ロックの精霊』は大変良いボブ・ディラン入門書だ。読んでいくと、紹介されているディランのアルバムをひとつひとつ聞いていきたくなる。入門書は原典にあたりたくなるものでなければ。最終章の扉写真は、2012年に大統領自由勲章を受章した時のディランだ。サングラスとちょび髭があやしい。本人はじつにまじめに礼をつくしているのだろうが、何か変だ。けれど、トッポくて、かっこいいな。
ディランはこの3月29日に来日して、ほぼ4月いっぱい滞在して19公演を行う。桜の咲く日本に、ボブ・ディランがやってきた。3月31日の公演1日目を、お台場のライブハウスに見に行った。前回よりよく唄い、ハーモニカを吹きまくるディランであった。アンコール前の本編最後の曲は最新アルバム『テンペスト』から「LONG AND WASTED YEARS」。圧巻だった。会場の老若男女は、ディランの声にみんな胸を撃ち抜かれたと思う。おおげさでなく、本当にそうだった。