RCサクセションがきこえる

若松恵子

9月最後の土曜日に、猪苗代湖の天神浜で開催された「オハラ☆ブレイク」に出かけた。民謡「会津磐梯山」に登場する「オハラ庄助さん」のブレイク=休憩のように、スローでピースフルな空間創りをめざして、「オハラ☆ブレイク」と名付けられたフェスだ。10年目を迎える今年は、「忌野清志郎さんとRCサクセションのデビュー55周年を記念して清志郎さんの世界一色での開催とすることにした」とホームページにある。磐梯山が青くきれいに見える秋の入り口のような日、湖から涼しい風が吹いて、湖畔の砂浜に座って1日のんびり音楽を楽しむことができた。

夕日が湖の向こうに沈んで、月が光りだした頃に、最後のステージが始まった。清志郎の盟友、RCサクセションのギタリストである仲井戸麗市が率いるハウスバンドが吉川晃司、奥田民生、甲本ヒロトをボーカルに迎えてRCサクセションの楽曲を演奏した。「トランジスタ・ラジオ」と清志郎の日本語訳によるジョン・レノンの「イマジン」を吉川晃司が、「つきあいたい」と「スローバラード」を奥田民生が、「キもちE」と「いい事ばかりはありゃしない」を甲本ヒロトが歌った。タイプの違う3人。清志郎の、RCサクセションの影響力の幅広さを改めて感じた。捧げられるように演奏された歌を聴いていて、どの歌にも清志郎が書いた言葉の重みというものを改めて感じた。

線状降水帯による大雨のニュースを見るたびに、清志郎の最後のアルバム「夢助」に収録されている「激しい雨」を思い出す。

季節はずれの激しい雨が降ってる
たたきつける風が泣き叫んでる
お前を忘れられず
世界はこのありさま

海は街を飲み込んでますます荒れ狂ってる
築きあげた文明が音を立てて崩れてる
お前を忘れられず
世界はこのありさま

Oh 何度でも夢を見せてやる
Oh この世界が平和だったころの夢

RCサクセションがきこえる
RCサクセションが流れてる

この歌ができた2006年には、激しい雨に飲み込まれる街は、まだ未来のSFの世界だった。こんなにも早く、こんなに激しい雨に見舞われることになろうとは。清志郎、何度でも夢をみせてください。まだギリギリ、RCサクセションの歌を、生身の演奏で聴くことができる。絶望しないように、RCサクセションの歌が必要だ。