冬の伝統芸能とポトテチップス

三橋圭介

ずいぶん前からテレビをほとんど見なくなった。そうなったのは大学時代に下宿していたこともあるだろう。テレビはなかったし、テレビ番組が友だちの話題になることもなかった。現在は居間にひとつ、そして自分の部屋にひとつテレビがある。部屋のテレビは一応番組を映すことはできるが、2つのDVDプレーヤーに接続され、映画と音楽専用として使っている。このあいだ学生にテレビを見るかきいてみた。99パーセントの人は見ないことがわかった。パソコンとスマートフォン。いずれもユーチューブ、ネットフリックス、アマゾンプライムヴィデオが代わりになっている。コロナのなか夢中になったのはこうしたメディアらしい。テレビアニメの最新は1週間もたてばそこで見ることができる。映画、お笑い番組をふくめ、過去の映像は盛りだくさんにそこにある。もちろんテレビニュースもそこにある。テレビが広告費で成り立っているとすれば、見られないものに金を出す企業も減るだろう。いや減っているはずだ。そして番組には資金がなくなり、衰退を余儀なくされる。でも紅白歌合戦だけは見られるのかもしれない。なぜなら、それはもはや年一回の冬の伝統芸能だからだ。わたしもそれを見る一人だ。「石川さゆりとパフュームが始まったらおしえて!」「パフューム始まったよ!」。この2組は年1回見ていることになる。ちなみになぜかこの日だけはポテトチップスを食べてよいことになっている。ふだんは悪食ということなのだろう。しかし特別なこの日ばかりはOKなのだ。冬の伝統芸能とポトテチップスは切っても切り離せない関係にある。