被災者の方へ、イラクの子供たちから応援 メッセージ

さとうまき

石巻に行って驚いたのは、魚の腐ったにおいと油のにおいが混ざったような泥のにおい。そして、津波の力だ。ものすごい力で、家屋を破壊していった。僕は、仕事柄、戦場を渡り歩いてきたが、こんなのは、見た事がなかった。原爆投下後の写真を髣髴させる。道路は瓦礫が散乱しており、自衛隊の車両があちこちに停まっている。時たま米軍を見かける。水も電気もなく、行政が機能しない状態は、イラクによく似ていた。

しかし、正直311にはすっかりと落ち込んでしまった。いろいろ理由はあるのだろうが、生きる気力もなくなってくるような不安感があり、うつ状態とでも言えばいいのか。そんな時、多くのイラク人が心配してた。

子供たちもメッセージを寄せてくれた。2002年、僕が始めてイラクに行ったときに出合った少女、スハッドちゃん。当時は9歳だった。目がくりくりしていて、とてもかわいらしい。彼女の描いてくれた絵に、「イラクを攻撃したら世界は平和になりますか?」と書き加えてポスターを作った。しかし、そのポスターも役に立たず、2003年3月20日、戦争が始まってしまったのだ。バグダッドは戦火に見舞われその後も内戦状態が続いた。遺体が毎日、道端に転がっていたこともあった。でも、彼女は生き延びて、現在は、青少年オーケストラの一員として、オーボエを吹いている。貧しくて楽器がないというので、私の友人たちでお金を出し合って買ってあげた。

そのスハッドちゃんは、現在18歳。日本を元気付けるためのコンサートに協力してくれたのだ。バグダッドで4月23日に開かれたコンサート。急遽僕もバグダッドに行くことにした。しかし、あいにくの悪天候で飛行機が送れ、コンサートには間に合わなかったのだが。日本の為に何かしたいというイラク人ら250人が聞きに来てくれたという。

そして、「上を向いて歩こう」をオーケストラで演奏。子供たちは、3日間毎日夜まで練習したそうだ。スハッドは、「この楽器(日本からの)で、演奏できて嬉しい。被災者の皆さんが一日でも早く立ち直ることを祈っています。」

バグダッドは、戦争から8年経っても、ほこりっぽく、下水があふれ、停電が多い。軍隊があちこちでパトロールしており、状況は良くないが、イラクの子供たちの演奏する姿は、厳しい環境でも、強く生きて、成長していることの証だ。彼らの演奏は、日本の子どもたちへの説得力のある応援メッセージだ。
演奏はHPでご覧になれます。
http://blog.livedoor.jp/jimnetnews/