アレッポの小さなアスリート

さとうまき

アレッポの少年2人がひょんなことから、転がり込んできて、大学生たちがお金を集めてくれて毎月送金している。小児がんの治療費だ。そろそろお金が尽きるので、またクラウドファンディングをやる。お礼状に使う絵をアレッポの2人の少年に描いてもらって写メして送ってもらったが、サラーフ君が自転車に乗っている絵がなかなかかわいい。これをそのまま使いたいなあと思うのだけど、いつも解像度が悪いので苦労する。結構いじりまくって、できた絵を送ってあげると喜んでくれた。

自転車が欲しくてたまらないらしい。いつも事あるたびに自転車が欲しいって言っている。結構スポーツが好きみたいで、オリンピックのロードレースの写真を送って、「こんな風になりたいの?」って聞いてみたら、自転車に乗っている選手を僕だと思ったらしいとお母さんがメッセージ。お母さんはアラビア語でメッセージを送ってくるので、googleで翻訳して何とか対話しているからすごい時代だ。

いつも、お金を送ってくれるおじさんは、そんな風にかっこよく思われているのかなあと苦笑いする。水泳も好きだと言っていたので、オリンピックを見ているのかどうか今度聞いてみよう。でもお母さん曰く、彼のがんが背骨のところを侵していて、自転車には乗れないらしい。だから彼が自転車が欲しいというのは、病気を乗り越えて自転車に乗りたいということなのであって、ただおねだりしているのとは違うんだ!

シリアは経済制裁が続き、物価は20倍くらいに跳ね上がっている。内戦で難民になった人達はいまだに500万人。彼らがシリアに戻れないのは、治安の問題よりむしろ経済的な理由だ。シリアポンドもこの10年で20分の1くらいになってしまって、こういった難民が国内に送金するわずかなドルでも、残されたシリア人にはとってもありがたいというわけだ。しかし、ここ一週間でシリアの治安も悪くなってきている。オリンピック停戦とかは本当に口だけ。

 シリアは、6名の選手を送り出し、9名のシリア難民が難民選手団として参加している。こういう取り組みが、紛争解決につながるのかもどうか疑問だけど、彼らが活躍することで、シリアの子どもたちには勇気を与えるだろうなあ。

いろいろ言われているオリンピックだが、まさに、ダークな世界を露出して、この気持ち悪さの上でアスリートが純粋に戦っている姿がなんとも刺激的だったりする。世界はどこに向かうのだろう。