イエメン人のコーヒー売り

さとうまき

6月に、青年海外協力隊でエジプトに行っていた愛媛の大川理恵さんから相談を受けた。難民申請中のイエメン人がいて、出産を控えているんだけどお金がなくて病院に行けないから自宅で出産したいって言っているらしい。それは大変だということで、さっそく様子を見に行く。難民認定されなくとも、出産の費用は、市がいくらか出してくれるそうだが、日本語がわからないと本当にもらえるのか、不安だらけなのもうなずける。

イエメンと聞くと僕は特別な思いがある。1994年に協力隊でイエメンに派遣され、一か月くらい首都サナアで暮らしたことがあったからだ。実は、当時も内戦で、外出は制限されていて、気が付くと空爆、スカッドミサイルが飛んできたり、そこらで銃撃戦が始まって、軍用機に載せられ、ジプチの難民キャンプに収容されたことがあった。それ以来イエメンには行けていないので特別な思い入れがある。

イエメンは、2015年から、内戦が激しくなり、「世界最悪の人道危機」と呼ばれている。

あれ、「世界最悪」って、シリア内戦ではなかったけ? 「世界最悪」詐欺じゃないかと思って、調べてみると、シリアは「今世紀最悪」という風に使い分けているらしい。

にしても、シリアに比べてイエメンは忘れられている。日本のNGOもイエメンで活動しているという話はほとんど聞かないし、難民申請しているイエメン人は、シリア人に比べて冷遇されている感が否めない。

大川さんは、いらなくなったベビー用品とかを集めていたが、「イエメンといえばモカ・コヒーだ」と言ってイエメン産のコーヒーを見つけてきて販売して収益を支援に回すことを考えた。赤ちゃんは8月に無事に生まれて出産お祝い金も10万円を渡すことができた。これからも、コーヒー販売を続けていくというからたくましい。

モカ・コーヒーは、もともとイエメンのモカ地方が起源らしいが、日本で買えるのは、安値のエチオピア産とブラジル産のブレンドがほとんどのようだ。

というのも、イエメンには、カートと呼ばれる覚醒作用のある葉っぱがあり、こいつをくちゃくちゃ噛み続けてカエルのように頬っぺたが膨らませて、そこにため込んで、またくちゃくちゃやっているうちに気持ちよくなってくるらしい。そいつはかなり高価で売れるので、コーヒー農家は、カートを栽培するようになってしまったので、コーヒー産業はすたれてしまったのである。

大川さんが見つけてきたのが、大分のイエメン人が直接イエメンから輸入しているという。やり手のビジネスマンかなと思いきや、2014年に大学留学のために来日したターリックさんが、内戦が激しくなって故国に帰れなくなり、イエメンの復興にイエメン起源のコーヒーで貢献したいと立ち上げた。「支援ではなく、いいものを飲んでほしい」という素朴な好青年で日本語も堪能だ。

何が大変かというと、コーヒー農家は、現在フーシ派が支配している地域にあり、港は、敵対するハーディ政権が抑えている。荷物を運ぶのにいくつかのチェックポイントがあったりで苦労は尽きない。加えて、UAE とサウジの空爆。僕はよくエミレーツを使ってドバイ経由でイラクやらシリアに通っているが、UAEが戦争をしている国というイメージは想像しがたい。

イエメンのコーヒーを売ろうと張り切っているものの、イエメンのことをほとんど知らないのが現状。これじゃいかんと勉強会をしようということなったのだ。
第一回目は、ターリックさんに来てもらうことに。こうご期待。

「イエメン珈琲を飲んで、平和を考えよう」
10月4日(日曜日)20:00-
Zoom にてオンライン開催
1000円でイエメン珈琲付き
申し込みはこちらから➡https://saveyeyemenbabies.peatix.com/