龍が立ち上る

冨岡三智

今年は辰年。龍というと、私はブドヨ(9人の女性で踊るジャワ宮廷舞踊)を想像する。2004年4月号の『水牛』に寄稿した「私のスリンピ・ブドヨ観」で書いたのだけれど、ブドヨには前に進むかと思えば後退し、また進み……を繰り返し、大地を踏み固めるように踊る。踊り手のポジションによっては少々ステップが異なり、それによって隊形が少しずつ変化していく。陰陽師が行う反閇(へんばい、呪文を唱え大地を踏みしめて邪気を払う呪法)のように、歩くという行為はそれ自体が宗教的、呪術的行為になり得る。9人のブドヨの踊り手が大地を踏みしめてもぞもぞ、ぬるぬると徘徊していくうちにエネルギーが生じ、「気」が立ち上り、それが巨大な1頭の龍となって大地を這い、谷を霧のように流れていくような感覚に襲われる。そんな龍が他人の目にも見えてくるようなブドヨ(またはブドヨ的な舞踊)が踊れたら…という目標のイメージはずっと持っていたのだけれど、そう思ってからすでに20年経っている…。いい加減に腰を上げないとということで、自分に発破をかけるべくここに書いてみた。今年の目標である。