マニラより

冨岡三智

5月27日からAPIフェローシップ(日本財団)の10周年記念式典で、フィリピンはマニラに来ていて、いま、ホテルのチェックアウト直前にこの原稿を書いています。昨日30日に、フェロー・アーチストによる作品展があって、日本人フェロー4人でコラボレーション・パフォーマンス作品を上演させてもらったので、その紹介だけをここで少ししておきます。このイベントの詳しい内容は来月にまた書けると思います。

作品タイトルは「クロスオーバーラップ」。クロスオーバーとオーバーラップという単語を1つにした造語です。作曲は田口雅英、パーカッションが伏木香織、舞踊がタイ舞踊がベースの岩澤孝子、ジャワ舞踊がベースの私、そしてフェローではなく現地からのゲストプレーヤーとしてCriselda Peren、若くて愛らしい女性です。アジア、伝統、西洋、コンテンポラリ…といったものが、私たちの身体を通して、思いがけない方向へとクロスオーバーし、波紋のような感じでオーバーラップして出てくることをテーマに作品が作られています。

会場は、この10周年記念式典も行われたアテネオ大学の構内にあるアート・ギャラリーの中です。この会場には他のフェローの写真や映像作品も展示されています。そこで、インスタレーション的な作品として、通りすがりに見てもらうような感じとして36分余りのこの作品を作ったのですが、ばらばらに到着するバス(この日は展示会場があちこちに分散していて、フェローはバスでそれぞれの会場を巡ることになっていました)が一度に到着してしまい、さらにアカデミックなフェローたちには、作品は最初から最後までじっと息をひそめて見るもの、という気持ちも強かったのでしょう、結局最初から最後まで大勢の人たちに囲まれて、じっと動物園の動物を真剣に見るような感じで見られてしまいました。それもありなのですが、じっと見ているのはつらかっただろうな、と、ちらっと脳裏を横切りました。

というわけで、そろそろチェックアウトタイムなので行きます。

作品作りの前にいろいろと事務的なレベルで様々なすったもんだがあり、上演できるのかどうかが危ぶまれた上に、リハーサルをしていた会場では、ライトの位置を調整しようとして照明レール自体が外れてしまったり(本番中にライトがレールごと落ちてこなくてよかった…)という、フィリピン人のアバウトな準備ぶりにいらいらしていたので、ともかく実施できて良かった、無事終わって良かった…という安堵感にいま浸っています。