1月1日:「大学受験の時、俺なんかスッテンテンの浪人生だったにもかかわらず、あちこち遊び回ってたのに、三郎のやつときたら高校二年生になってすぐ
に入試問題集や参考書を山積みにして、さっそく受験勉強を始めてた。勉強が好きだったんだろうし、そもそも勉強に向いていたんだろうな、ああいう生真面目
一本の人間は――」。
文化といえばエンタメと直結する時代になった。本来なら人を楽しませるはずのものが、異常な増大によって無味乾燥にしてはいないだろうか。それからそれ
へと新しい名前が「作品」が登場し、圧倒的な供給過剰である。伝統文化のほうは端っこでちまちま活動するのみ。エンタメが誰のために何のためにあるのか、
考える素材にはなる。
これは花ですか? いいえ馬です。
何か大切なことを忘れていると思っていたが、これを書き始める前に思い出していた。自己紹介じゃ。まあざっと簡単に書いてみるか。長所:短所が一つしか
ないこと。短所:長所が一つしかないこと。座右の銘:私は嘘つきですが、嘘つきではありません。趣味・特技:うっちゃり、肩すかし、そそのかし――こ、こ
れがわしなのか……。
ザクロは弾けて改めてザクロとなるように、おならは放出されてはじめておならとなるようにじゃな、人間は内爆発の外部化によって人間になる。怒髪がしぶ
といかつらを突き上げた時、そしてかつらをなおざりにした言動が表れた時、好人物分子が熱で蒸発し、覚めるべくもなく冬眠をしていた人性が、はじめてあぶ
り出てくるもんなんじゃよ。
1月1日:「まあ実際、三郎は勉強がよくできた。全国模試なんかでも名前が載ってたからな。載ってたどころか全国で3番とか、とにかくすごかった。驚い
たねえあれには。たぶん死んだじいさんに似たんだろうな。下のほうのじいさんな。やっぱりかなり優秀だったみたいで最後は官僚だかなんだかになったってい
う話だよ。たぶんだよ――」。
ベロアの3ピースほどのインパクトはないが、宙づりにされた神社でビートルズ自体の物まねをして、さあどうするんじゃ、こともあろうに中村屋と成田屋を
オープンした。あらゆる玉屋とあらゆる鍵屋のほうは、自己批判してあらゆるセクトであらゆる裸踊りにうち興じた。やれブラウニーだ、やれブラウニーだ、聞
き上手もお手上げのアポリア。
幼い頃のジャニス・ジョップリンは、空に向かって叫んだ。「神様、もし本当にいらっしゃるなら、パパにメルセデスをあげて」。神様はいなかった、いや、
無情の神はいた。何に対しても手を下さず、意見を述べず、いないかの如くいる、もしくはいるかの如くいない。この何でも屋ほど長きに渡って、作者である人
間を困らせる者はいない。
(MEMO)
「
一歩目から目的地の逆を行く。御託の限りを尽くして動かない。全力疾走すればありつけると信じている。誰も気にしない一点を修飾し異様に肥大化させる。
空想と想像をはき違えている。常識を尊重しすぎて非常識になっている。詭弁で逃れたつもりが正しいことを言っている。気取らないと人並みになれない。実在
する愛すべきろくでなし。
現状は緑色。おまえのせいはおまえのせい。おすそ分けにひたすら孤独に黙っていたこともあったなあ。恵んでくだせえ恵んでくだせえってな。どうしたこと
か500人でだよ。そうしたら取れ立てのブロッコリーがす〜っとなにやらめかしこんで、ああだこうだやかましいやい。もうね、夢も希望もない。「彼のモノ
が私の中へ」ってさ。
現にまさおし がるべじを
ぶっさぶさ乗り 忍ちょらけ
子べくりだんかれ 干支きとな
乱じゅうそはまま 聞こしなと
ひん住からかけ 仇ぶるせ
生き続けようとしてもつぶされ続けてしまう暇とは裏腹に、退屈にとって人間界はきっと有意義で居心地のいい場所なんじゃろう。不特定多数の者どもにリズ
ミカルにキ印を押していき、調子がいい時なんざ欲望機械や戦争機械を作動させる。退屈の共犯者でもある、血へどを吐かれた倦怠がやってきて曰く「俺たちゃ
忙しくてしょうがねえ」。
小便をするかしないか、それが問題か。和式便所なのにキン隠しがないからといってどうしたというんじゃ。ティファニーで朝食をとり、王様のブランチを楽
しみ、裸のランチを満喫し、最後の晩餐を吟味しやがって。わしときたら、三食全てにウオッカ、入浴にウオッカ、就寝にウオッカ、ウオッカにウオッカと剥製
化を勝手に進めておる始末。
1月1日:「そうそう、じいさん。会ったことあるだろ? え、たったそれだけか。まあいいや。じいさんの名前知ってるよな、四郎っていう。いやいや嘘
じゃないって。ほんとだって。ほんとだって言ってるだろ! ああごめんごめん。俺、子供いないだろ。会社でもぺーぺーだから、年下の人間をしかったことが
ないんだよ。ごめんな――」。
古い言葉でいえばオートメーション、要するに機械化。それを嘆く輩の数は知れぬが、なによりかにより人間自身がオートマチックじゃないか。食べたら食べ
たきり。飲んだら飲んだきり。あとは内蔵に任せて出るのを待つだけ。もし肉体がスケルトンだったらゴミ袋と変わらんし、内外の動きに神経質になり地球規模
の変化が見られるじゃろう。
かたや、まず遠くに石を投げて、その軌跡を一つずつ点検していき、やがて石や着地点の正しさを証明する。かたや、疑問に逐一の解答を出しながら、牛歩の
ごとくに進み、やがて石の存在とありかを知る。スキゾイドというのは、どうやら前者らしい。なぜって、その時々の現実世界との平和交渉が、とにかくうまく
いかないからじゃ。
ヘンリー・プールのジャケット姿で、ブリクストンを闊歩する。みみっちい武勇伝。
喧嘩を売ってはいけない。けなすより褒めよ。いかなる侮辱にも耐えよ。これらは、海外へ行く友人に宛てて、ニュートンが送った手紙の一部である。ニュー
トンは生涯を通じて海外など行ったことがない。どういうことか。つまり彼にとってドアの向こうの世界は外国であることを意味していた。だからスウィフトに
あんな風に描かれる。
しかしなんで飲んじまうかなあ。酒は飲んでも飲まれるな、か。いいこと言うね、先人は。わしにとって先人とは、おやじしかいない。おやじも言われてたな
あ。酒は飲んでも飲まれるな、とな。おやじにとって先人とは、わしのじいさんしかいない。じいさんも言われてたなあ。酒は飲んでも飲まれるな、とな。じい
さんにとって先人……。
1月1日:「やっぱり怒られるのって嫌だろ。自分がいろいろ怒られてきたから、そういう気持ちよくわかるんだよな。怒らないっていうか怒れない。それに
怒ったほうも怒られたほうも、そのあとの空気、すごく気まずい感じになるだろ。あれも苦手なんだよな。わかるだろ。だから俺はいつも安定した気持ちでいた
いと思ってるんだよ――」。
スタニスラフスキー・システムやビオメハニカに従って、こと細かな計画をふんどしいっちょで立てる。その際、ちょんまげは当然筆である。合間合間に女性
を相手にする。唇、胸、女陰の三所攻めである。べとべと。ぬるぬる。んあふんあふ。潮を吹かれたら、制限時間一杯、また計画立案に戻る。これを四十回繰り
返し、ようやく起床となる。
この国の人々よ、急増するこいつらで本当にいいのか!? ここで死んではならん。車窓を流れる街灯りが霞んでいく中、安心とは両親だと思う。包茎治療へ
の不安を解消する安心がある。直接の電話に抵抗のある方は、敵味方を論ぜず、町の人が言うところの世界一おいしいご飯を作り、大真面目におもちゃで撃退し
ようとするべきであろう。
まず電源のボタンを押す。少し待つ。画面が立ち上がったら「スタート」をクリックする。続けて「すべてのプログラム」をクリックし、「アクセサリ」を見
つける。クリックすると一覧が表示される。その中から「メモ帳」を選ぶ。新しく白い画面が立ち上がる。指の一つで「A」を軽く押して指を離す。すると画面
左上に「a」と表示される。
一つを手に入れたと見るか、一つが失われたと見るか。少なくとも巷間からこの理屈は外せない。本当はそのはずだった。汚れたみなりで朝から缶ビールを手
にし、乱杭歯を丸出しにして呵々大笑しているホームレス。すれ違うのは、スーツを身にまとい眉間に皺を寄せ、携帯電話で仕事の話をしているビジネスパーソ
ン。幸せって何だ?
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恐ろしいものが二つある。デジャブーとフラッシュバック。これらの根っこには、思い出という名の魔物が横たわっている。良すぎる思い出も悪すぎる思い出
もトラウマになる。限界状況を導く要因である。逃れようと、音楽、食べ物、酒、買い物に頼っても、再起不能な副作用がすり寄ってくる。やけくそでもいい。
投企せよ。無茶苦茶投企せよ。
解熱剤とシアナマイドをたらふく飲んでフラメンコ。全校朝礼でスピーカーを使っての棒読みファド。なんなんだろうな、ああいう儀式は。秘密ってのはあれ
かい? 現実世界の澱ってことでいいのかい? そんならどんどん醸造されて現実と入れ替わっちまうわな。まあまあ、感情の起伏ってやつぁこわいね。恐さの
あまりバースデイスーツ。
酩酊者は天才か白痴のどちらかじゃな。科学哲学かなぞなぞのような内容を、身ぶり手ぶりで饒舌に語る。とある作家が眠る際に枕元にメモ帳と鉛筆を置いて
いるという話を聞いたことがある。深酒が行方不明の着想を拉致してくるんだそうな。そんなわけで実践してみた。ああ書かれていたとも書かれていたとも――
「自てん車」と。