ピンネシリ メルティン

くぼたのぞみ

くらい地平線のはるかむこうに
おぼつかない光が射して
雪原に
おそい薄明が訪れるころ
目の奥に伏して眠る
ピンネシリが解けていく

ピンネシリが男の山
と聞いたのはつい最近のことで
それで謎がいくつも解けた

ふりつもる北の幻想は
身も凍る雪解け水になって流れくだり
あこがれる
やよいの空の横雲のしたで
恥じらいと
無骨さに
身の置きどころなく立ちすくみ
あたたかい潮に遊ばれた南の夢想と
もじもじとことばを交わすが

裏を知らないモノクロの
プロヴァンシャル・ライフのことばたちは
クチクラ樹木の常緑の
こまやかな花に飾られることはなく
いつまでも素っ気ない二色のままで
ノスタルジアだけが
不在のかけらとなって
きみを刺す

それでも ほら
謎が解けて
メルティン メルティン
ピンネシリが解けていく
歌うように ピンネシリ
メリリー メルティン
たたら踏む雲
まだ赤い空