オパール石

璃葉

天文台のおじさんがポケットから取り出したのは、オパールの原石だった。
わたしはふだん、彼のことを苗字にさん付けをして呼んでいる。
明るくお茶目だが、すっと背筋がのびた姿勢が素敵なのだ。おじさまと呼びたい気持ちもある。
おじさんは天文台の台長として仕事をしながら、よく石掘りにでかけている。
久しぶりに会う機会があって、鉱石のことや今年の日食のこと、身の回りのことを一頻り話した後、別れ際にとつぜん「あげる」と、嬉しそうにオパール石を渡されたのだった。

その石はわたしの手のひらの窪みにちょうどおさまった。石特有の冷たさを感じる。
ゴツゴツしたその原石は、赤に近いえんじ色の部分が目立っているが、よく観察するとそこから橙色、灰色、薄黄色、クリーム色、薄水色、灰色にひろがって、そこにまたえんじ色が挟まっている。
目を細めて見ると、色は繰り返しの層になっていることがわかる。一切の細工のない自然のかたちだ。
岩石ハンマーをつかって自分で採掘する石もよいけれど、ポケットから不意に渡される石もうれしい。
考えられないほどの巨大な地層の一部分から選ばれた、宇宙のかけらである。