骨の部屋

璃葉

墓の香炉をずらすと、穴から墓の半地下、納骨室がみえる。石にかこまれた小さな骨の部屋だ。骨袋を両手でそっと持ち、なかに入れる。その空間に入れた両手首より先が、ひんやり冷たくなった。洞窟や鍾乳洞を歩いたときのことを思い出す。雰囲気は違えども、石から放たれる冷気は嫌ではない。

納骨室の中に10年ほど前におさめた母の骨は、まだちゃんと残っていた。袋が劣化したのか、かけらが少し散らばっている。火葬の骨はどうやら本当に土に還らないらしい。白く、丈夫なままだ。一見、流木や石にもみえる。

母の骨の上に積み重ねるように、父の骨が入った骨袋をおく。そのうちどちらの骨なのかもわからなくなって、混ざっていくのだろう。粉末にして岐阜の山奥にばらまきたい衝動に駆られながらも、両手を室から引っ込める。春先の生暖かい空気が手のひらにもどってきた。ふたたび入り口を香炉でふさぐ。骨の部屋はまた、夜よりも深い暗闇になる。