よるのやま

璃葉

薄明るい空は隅に追いやられて、星が生き返る
風はなく、月は静かに山の天辺を辿った
遠くで誰かが太鼓をたたいている

夜の山は大きなテントのようだ
まるい月がその後ろに隠れ、辺りはもっと暗くなる
星空を見にきた子供たちは月がない、見えない、と騒ぎ出した
さっきあの山が飲み込んじゃったよ、と教えると
飲み込んだって!こわいよ!と笑いはじめ、駆け回る。
 よるのやま、こわい、こわい
 星も月も、ぜんぶ飲んじゃった
 こわい、こわい
子供たちは独特な節で、
まるでなにかの儀式のように繰り返し歌い、飛び跳ねる

遠くで誰かが太鼓をたたいている
賑やかな声に溶けてゆく

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