夏の風邪

仲宗根浩

風邪をひいた。夏風邪。六月、三分の二を過ぎて「そろそろクーラーの電源でも入れませんか?」と奥さんにお願いしたところ「六月いっぱいはクーラーなしでいけそうなのに。」という返事。尋常じゃない汗をかくわたしはさらにお願いし、今年初めてクーラーに電源が入る。梅雨明け寸前、外吹く風は温風で全身にまとわりつく。

クーラーに電源を入れる。設定温度は三十度。これで十分室内は涼しい。一台動かせば扇風機で風をまわせば他の部屋もちゃんと涼しくなる。それから二、三日経って風が直接あたるなあ、とおもいながら気づくと喉にきた。普通に生活をしていると膝間接に違和感。熱が出る前兆だとおもい薬を飲み寝るが、いつものように酒もいっしょに飲む。すると翌日は鼻水。こうなるともうすぐには治ってくれないどで職場ではマスクをし、微熱と付き合いながら過ごす。不摂生は一切反省なし。で、しばらくするとそのクーラーの室外機が動かなくなる。このクーラー、五、六年前に防音工事のため交換されたものだが、壊れたとなるとどこに修理を依頼すればいいやら。管理している不動産屋か大家さんへ直接か? このクーラーの交換時の一割負担は大家さんだからなあ。面倒くさい土地だ。そこらへんは相談するとしてもう一つのクーラー、こちらに引越して設置した18年ものが活躍する。去年は室外機が昔のディーゼルエンジンのような音を出していたが今年は静かだ。こいつもいつ壊れてもおかしくないが今のところちゃんと動いている。

去年から絶滅危機言語にとうの前に認定された沖縄の方言が、「島言葉(しまくとぅば)」と呼ばれるようになってテレビや新聞によく出るようになった。十年以上前だろうか、恩納村谷茶に住む者に隣の恩納村冨着と全然違う言い回しがあるか聞くと、「ある。」と言った「うっぱー」、「あっぱー」とか言っていたが確かかどうかは今となってちゃんと確認しないとわからない。右、左、もしくは仏壇を前にしての上手、下手を言うかもしれない。沖縄の民謡を指す「島唄」という言葉も奄美の民謡の呼称「島唄」というのがいいからそう呼ぶようになった、というのをかなり以前に詳しい人から聞いたことがある。

それとは別に英語がある時期、復帰前だが普通に通用していた英語もあった。水のWaterは「わぁらー」と言っていた。冷たい氷水が欲しいときは「あいすわぁらーちょうだい」と言えばお店では出してくれた。。マグロの缶詰(シーチキンは製品名)は「とぅうなー」、シチューの缶詰は「すとぅー」というふうに。耳で聴いた音がそのままそれを指していた。こういうのが通じるのも基地近くに居住していた五十歳以上の方々だろう。うちのおじさんはセロハンテープのことを「すかっち・てーぷ」と言っていた。「すかっち」はメーカー名の「Scotch」だ。今で言えば温水洗浄便座を「ウォシュレット」と言うのと同じ。