174哲学の夢

藤井貞和

消える? 消す? 文法の夢
終る? そこから遅れる? はかない準拠に凭れて
さいげつを流し、実らないということ?
おら、人称をうしない――

時称はおいしくいただくけものにくれてやる、哲学の夢?
おら、うしない尽くして
文末に置き去られた縁語。 幼児の車
さいごにのこった車を うごかす――

きみを送る しゃりんがうつつを別れて
きょうもあしたも旅立つ
おら、むなしく実らないさいげつでした

それでもゆるせと声がする
いま、おらのしんだいしゃです
やだな さいごには哲学がのこるはずです

(半世紀の昔、当時の文学部長だった中村元さん、インド哲学者に、用向きがあって、私は抗議の電話でしたが、かけたことがあります。氏は私の用向きを一通り聴き取ったあと、「アッハー」と、受話器のおくから一言。その一言で終りました、負けたね。アッハー。)