135 和泉式部さん、中也さん

藤井貞和

謂はば芸術とは、山を出でて「樵夫〈きこり〉山を見ず」の、その樵夫にして、暗き道にぞ、而も山のこと(「こと」中也傍点)を語れば、たどりこし、何かと面白く語れることにて、いまひとたびの、「あれが『山』(名辞)で、あの山はこの山よりどうだ」なぞいふことが、逢ふことにより、謂はば生活である。

(好評につき、いまひとたび。怒っていいよ、中也さん。怒りでばくはつしそうなことばかり。開聞岳くん、開門しよう。東尋坊さん、襲来です。いえいえ、和泉式部さん。)