149 目をとじて

藤井貞和

折口はんが、振り仰いではる。
なんでや、小町桜が、
降り積もる雪のなか、満開や

わいは謀叛人(ムホンニン)や
護摩木がほしいで。 大塩はんが、
やってくる、蓑笠つけて

ひと日、風邪のえまいに、
目をとじて、寝ておりますと、
つぎからつぎへ、
折口短歌が聯想(=うか)んで、
消えるのです

「かたきや」思うたら、
男を食い絞めなあかん。
傾城のくどきは、あんた死ぬで

(「関の扉(ト)に桜散る夜は―目つぶりて、音(ネ)に立ちがたき三味を 聴くべし」「誰びとか 民を救はむ。目をとぢて、謀叛人なき世を思ふなり」釋迢空〈折口信夫〉。)