あ、「アニメ作家は、昔話の妹を鬼にする。
炭焼き小五郎がやってきても、ぼくらはやられっちゃうんだ。
世界があいてでは、やだな、
負けるのはもうずっと。 先生が青鉛筆のお尻で、
ぴりりと叩いた、あれ以来の錯乱だから、
耐えられない。 教室をお別れして、
沙漠も深海も眼前にひろがっているんだ、見ろ。」
い、「きみは蚊と虎とを助ける、
臼から落ちてくる、瓜から出てくる大洪水で、
思想家になろうと、そりや努力したさ。 おかあさんは、
ぼくらを落盤のしたから救い出してくるとき、
陀羅尼と心経とをすこし唱えて、
あちらでは歌人が笑ったさ、だっておかしいんだもん。
思想なんか、おまえに似合わないよ、せいぜい、
二刷りか三刷りか、または物語かねと。」
う、「言い返してやったんだ、先生はぼくらよりも、
おかあさんよりも、殉死するのが好きだったんだと。
B29さ、援助者が青空からやってきて、
かちかちかち、火を点けてまわる。 おかあさんは、
婆汁になっておいしくいただかれる、茶室で。
納戸では下関の作家の釣り糸に、凍える帝国がいっぴき。
あ、〈白老の古博物館轢死する〉。 役割を終えて、
俳句をならべる涙の抗議もあいつらには届かない。」
え、「仏教が南インドからやってくる、きのうのはなし。
きょうは人身犠牲を廃止する、東京拘置所のはなし。
首里城を再建する(それはどうでもよいけれど)、琉球大学を呼びもどす、
平和がこの国にやってくる、〈式典に妹は鬼呼びもどす〉(無季)、
いらっしゃいな、山姥。」
お、「ははは、あいつらは山姥、
旅人馬に揺られて、手なし娘の両手を切るために(おとうさん)、
あしたは天皇賞で、ぼくらの賭け馬も旅人で、
ちょっぴり劣るちからがかわいそう、いつも負け。
いつになったら思想の初版はひらかれるの、
夢、青空に暮れなずんで時代また暮れそこなって。」
(「白老の古博物館轢死する」〈575、無季〉は以前の白老博物館が懐かしいという、それだけのこと。笑えないことが今年はありすぎて、大和にさいごの服属儀礼か。屈服させられるアイヌ学を、アニメで一服。)