二題――みどりの沙漠42

藤井貞和

  番犬(三ノ宮)

震災のあと、
番犬のきみは、

自信をなくし、
自分を見失い、

番犬であることをやめて、
きみの家で、

ペットとしての生活を、
養っていた。

12年間、
ご苦労様。 きみはりっぱに、

番犬の役割を果たした。
お眠り、やすらかに

  (中井久夫さんの著書から。)

     *

  伝え(新大阪)

(新大阪へむかう車中で、
大江さん勝訴のテロップが走る。
去年の県民大会では、
3世代7人家族が出かけようとしたその朝、
97歳の父親に打ち明けられた、
「沖縄戦のとき、
日本兵に自決用手榴弾を渡された」と。
――照喜名正亀さんの伝え)

 
 (謝花直美『証言 沖縄「集団自決』より)