雉鳩――みどりの沙漠45

藤井貞和

孔版の上に火を鑽るごとくする思想的いわれ鋼鉱を熔かす

なんて季節がありました、

活きる字の活版印字ゆめのさき孔版原紙切り裂きながら

などとも、いきがって、

一語一語意味の原野に字を植うる写植の時代燃ゆる校正

などとは、いきがって、

鉄筆の火を鑽る原初より続く稗(はい)史臆説式亭三馬

版本時代の終わりを告げて、

プリンターよりひらひらと雉鳩の飛び立ちてすべなきわが帰還

(6月尽。パンドラの箱を開けるように、開けたらプリンターからひらひらと飛んでいっちゃったんです。一枚また一枚、消えてなくなります。)