緑鉛鉱理論――翠の石筍56

藤井貞和

亜鉛鉱の、閃きを、
左右に通す、
巻いた管のかたちの、
ぼくの疲れを、
蒼鉛のえんぴつで、
けずり落とす翠。
このときを、
越えられるならと、
つくえをならべた、
ぼくの誘惑で、
さらに滞る書き物の未来。
緑鉛鉱理論を、
眼の未開に置いてきた過去は語る、
お休み、すこしね、
ねずみがキスするぼくの頬、
翠。

(「ぼく」という代名詞で書いて見ました。「わたし」に置き換えると、べつの作品になるのがおもしろい。「わたしの疲れ」「わたしの誘惑」「ねずみがキスするわたしの頬」。代名詞言語理論の一部。緑鉛鉱はPyromorphite。)