141 悲し

藤井貞和

人性(にんしょう)ここに至る、心神衰え、
無惨(むぞう)よ、いまきみを抱く涙すうこう。
うしなうわれら、何に愛(かな)しと言おう。
ことばよ、空しく走(か)け去って応えはない。(律詩)

(はくらくてんよ、きみならどううたうか。げんだいに遺されたわれらは、われらであることを遂げえない。きょう、『詩選』を贈られて心豊かでありたいのに、ざんにんなじけんに向き合わねばならないと。ちていにこえを知るひとのかずもまたなくなる。)