情報のことなど

大野晋

このところ、訳あって、Wikipediaの記事を少し書いている。訳の部分を先に書くと、ワインのことについて調べていく中でどうもWikipediaの記載に不信を感じたのがことの起こりである。そこで、技術論文や紙の本をいくつか当たっていく中でやはりおかしいということになった。

Wikipediaの記載は誰でも書くことができるが、いくつか見ていくと専門家というよりも、専門家以外の人が記事を書きたいと思って記載している節がある。しかし、それぞれの元ネタを辿っていくと、決してニュートラルだとか、多くの文献に基づいているとは言えないケースがある。そんな例を見かけて、生来の調査癖がむくむくと頭をもたげてしまったというところである。

いくつもの文献を漁ると記述者によって、ひとつのできごとがネガティブにもポジティブにも書かれることが多い。やはり、ものごとは一面的ではない。もうひとつ気になったのは、信憑が怪しい記述が意外とあちらこちらに転載されてしまっていることだ。そんな様子を見て、混乱を収めるためにもとWikipedeiaの記載の訂正と追加にいそしんでいる。

この作業をしていて気付いたことがある。それは、ネットの記事を直すために、多くの紙の本に当たらないといけないということだ。しかも、図書館の蔵書があてにならないと自前で買い込む羽目になる。世はネット社会などというけれど、結局、正しい情報に当たろうとするとネット以外を使わないといけないという皮肉な結果を受容せざるをえないのだ。

まあ、この傾向は青空文庫の入力といっしょと言えば、いっしょなんだけれども。